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6月25日の日本民話

風邪を治す文弥の松(ぶんやのまつ)

風邪を治す文弥の松(ぶんやのまつ)
岐阜県の民話

 むかしむかし、美濃の国(みのうのくに→岐阜県)に、文弥(ぶんや)と言う名前の、とても親孝行な若者がいました。
 この文弥は大変なお酒好きでしたが、お母さんが病気になってからは大好きなお酒をがまんして、お母さんの薬をかかさず買うようになったのです。
 朝早くから夜遅くまで働く文弥を見て、お母さんはいつも言うのです。
「すまないね。わたしが病気なばっかりに、お前に好きな酒を飲ませてやることが出来ず」
 しかし文弥は、ニッコリ笑って、
「そんな事、気にせんでいいよ。それよりほら、そろそろ薬を飲む時間だぞ」
と、薬を飲む用意をしました。
 でも、それからまもなく、お母さんは文弥の看病のかいもなく死んでしまったのです。

 お母さんに死なれて、すっかり気持ちがゆるんだ文弥は、今まで無理して働いてきたつけが回って、ひどい高熱を出して寝込んでしまったなのです。
 そして高熱にうなされながら、
「ああ、酒が飲みたいな」
と、つぶやきました。
 すると、まくら元に真っ白なひげを生やしたおじいさんが現われて、
「文弥よ。
 お前はそんなに、酒が飲みたいのか?
 しかしどうやら、お前の命も長くはないようじゃ。
 せめてお前が死んだら、村人が墓に酒を持ってお参りに来るようにしてやるぞ。
 だからお前は、そのお礼に酒を持ってきた人たちの風邪を治してやるといい」
 そう言うと、おじいさんは消えてしまいました。
 それを聞いた文弥は、
「ああ、たとえ死んでからでも、酒を飲ませてくれるのなら約束する」
と、にっこり笑いながら、安らかに死んだのです。

 さて、文弥が死んでしまうと村人たちは協力して、文弥のお墓を建ててやりました。
 とは言っても、みんな貧乏なので立派な石の墓など建てられず、石のかわりに一本の松の木を植えただけですが。

 その日の夜、あの時のひげのおじいさんが村の庄屋の夢枕に現れて、
『文弥の墓に酒を供えたら、風邪を治してくれるだろう』
と、教えてくれたのです。
 それからは風邪をひいた多くの人が、文弥の墓の松の木にお酒を供えるようになりました。
 そしてお酒を供えた多くの人の風邪が本当に治ったので、村人はこの松を『文弥の松』とよんで大切にしたそうです。

おしまい

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