7月14日の日本民話
吉崎の嫁おどし
福井県の民話
むかしむかし、吉崎(よしざき)に蓮如上人(れんにょうしょうにん)の御坊(ごぼう→お寺のこと)がありました。
そしてその近くの二俣(ふたまた)という村に、与三次(よさじ)という若者と母親が住んでいました。
ある日の事、この与三次に、やさしい働き者の嫁さんがきました。
嫁さんは蓮如上人の教えをうけて、毎日、吉崎御坊(よしざきごぼう)へお参りに通っていました。
そのうち与三次も、嫁さんと二人仲よく吉崎御坊に通うようになりました。
ところが母親は信心(しんじん→神や仏を思う気持ち)のない人だったので、おもしろくありません。
嫁さんが、母親に信心をすすめると、
「ふん! なにをいっているんだい。そんなひまがあったら、もっと働き! だいたい、お前という嫁は・・・」
と、母親は悪口をいって、嫁さんをいじめました。
ある日、与三次は急な用事ができて、吉崎御坊へいけなくなりました。
しかたがないので、嫁さんは一人で吉崎御坊へお参りにいきました。
嫁さんが夜遅く、まっ暗な夜道を一人で帰ってきますと、家の近くの竹やぶから突然鬼が現われました。
「こら! 毎晩親をないがしろにして吉崎御坊へ通うとは何事じゃ!」
と、ものすごい勢いで、鬼がおそいかかってきたのです。
嫁さんはビックリしましたが、すぐにいのりました。
「蓮如上人さま、どうぞお助けください」
すると不思議なことに、鬼はピクリとも動かなくなってしまいました。
それをみた嫁さんは、急いで家にかけ込みましたが、家にかえってみると、母親の姿がみあたりません。
心のやさしい嫁さんは、母親が鬼に食べられてしまったのかと心配していますと、ちょうど与三次が帰ってきたので、さっそく二人は、さっき鬼が出たところまでいってみました。
すると母親が、鬼の面をかぶって泣いているではありませんか。
二人はあきれかえってわけを聞くと、母親は嫁が二度と吉崎御坊へいきたがらないようにと、鬼の面をかぶっておどかしたそうです。
ところがどうしたわけか、母親の顔から鬼の面がとれなくなってしまったのです。
二人は母親を吉崎御坊へつれていって、阿弥陀(あみだ)さまに一生懸命おいのりしてやりました。
すると今までびくともしなかった面が、かんたんにはずれたのです。
それからは母親も心をいれかえ、仲よく三人で吉崎御坊へ通ったという事です。
おしまい
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