9月11日の日本民話
キツネの仇討ち
山口県の民話
むかしむかし、藤六(ふじろく)という百姓(ひゃくしょう)が旅から村に帰る途中、村はずれの地蔵堂(じぞうどう)のかげで一匹のキツネが昼寝をしているのを見つけました。
「よく寝ておる。しかし、キツネの尾は大きいものじゃ」
見ているうちにイタズラしたくなり、藤六はそばにあった棒きれでキツネの尾をたたきつけました。
キツネはビックリして、
「キャーーン!」
と、なきながら山の方へ逃げて行きました。
「尾をたたかれたんじゃ。いくらキツネでも化ける間もあるまいて。ワハハハハハ」
藤六は大笑いしながら、自分の家へと向かいました。
さて、その日のタ方の事です。
その村の五作(ごさく)という百姓がのら仕事を終えて家へ帰ろうとすると、やぶのかげでキツネがしきりにしっぽをふりまわしています。
見ていると、キツネは旅に出ているはずの藤六に化けて、すたすたと村の方へ行ってしまいました。
「ははーん、キツネめ、藤六に化けて村の衆をたぶらかそうというんじゃな。よし、化けの皮をはいでやる」
五作がいそいで家へ帰ると、なんと藤六と五作の女房が、なにやら楽しそうに話しをしています。
「キツネめ、もうおれの家にきてやがるな」
五作はそっと裏口にまわり、棒きれをにぎりしめると、
「キツネめ、これでもくらえ! おれはきさまが藤六に化けるのを、この目でちゃんと見たぞ!」
と、藤六をなぐりつけました。
「ちがうちがう。わしは藤六じゃ。今日旅から帰ったんで、みやげを持ってきたんじゃ」
「なにっ。では、まことの藤六か」
やっと本物の藤六とわかった五作は、山の畑で見たキツネの話をしてあやまると、藤六もキツネにイタズラした話をして、
「はあ。わしはキツネに仇討ち(かたきうち)されたわい」
と、言って、苦笑いしたという事です。
おしまい
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