10月2日の日本民話
弘法大師の焼き栗
弘法大師の不思議な話 → 弘法大師について
むかしむかし、ある農家の子どもたちが、庭先で栗を焼いて食べていました。
「わあ、おいしそうだね。お兄ちゃん、もう食べてもいい?」
「ああ、いいよ。でも、熱いから気をつけなよ」
そこへ、旅の途中の弘法大師が通りかかりました。
大師は、そんな子どもたちにほほえむと、そのまま通り過ぎようとしましたが、子どもたちの前を通った時に、
「ぐーーーっ」
と、お腹の虫が鳴いてしまいました。
それを聞いた子どもたちは、笑いながら大師に言いました。
「あはははは。お坊さん、お腹が空いているのかい?」
大師は、恥ずかしそうに頭をかきながら言いました。
「はい。実は昨日から、何も食べていないのです」
すると子どもたちは、大師に焼いた栗を差し出して言いました。
「これを食べなよ。まだまだあるから、大丈夫だよ」
「それでは、遠慮なしに頂くとしましょう」
こうして大師は、子どもたちに焼き栗をごちそうなりました。
焼き栗を食べ終わった大師は、まっ黒に焼け過ぎて子どもたちが捨てた焼き栗を拾うと、それを地面にうめました。
「あれ? お坊さん、焼いた栗を植えても、芽は出ないよ」
大師はそれには答えずニッコリほほえむと、子どもたちに焼き栗のお礼を言って、また旅へと出かけていきました。
さて、その次の年の事です。
不思議な事に大師が植えた焼き栗から芽が出て、立派な栗の木へと育ったのです。
そしてさらに不思議な事に、この栗の木に出来た栗の実は、片側半分が焼けたように色が変わっていたのです。
子どもたちから話を聞いた人々は、この栗を『弘法の焼き栗』と呼んだそうです。
おしまい
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