11月21日の日本民話
どじょうのなべ
長崎県の民話
むかしむかし、あるところに、やりくりやりべえという人がいました。
ある日、お母さんがとうふを食べたいというので、やりべえはとうふやにいって、とうふを一丁かいました。
その帰り道、若者たちがナベをかこんで、これからドジョウ汁を作ろうとしているところに出会いました。
ナベには、うまそうなドジョウがたくさん泳いでいます。
名案を思いついたやりべえは、若者たちにたのみました。
「すまんが、おっかあに食わせるとうふを、ついでに煮てもいいかな」
「ああ、勝手に使うがいい」
「それは、すまんことで」
おしゃべりに夢中な若者たちは、やりべえの悪だくみに気づきません。
ナベのお湯があたたまってくると、ドジョウはあつくてたまらず、冷たいとうふに次々ともぐりこみました。
やりべえは、ドジョウが一匹のこらず、とうふにもぐりこむのを見届けると、
「おおっ、そうじゃ、急ぎの用を思い出したので失礼する」
と、言って、とうふをひきあげると、急いで家に帰っていきました。
やがて、若者たちはおしゃべりを終えて、
「さあ、もう食べ頃になったはずじゃ」
ナベのふたをとったところが、ドジョウの姿はありません。
「ああっ、やりべえに、してやられた」
やりべえの悪だくみに気づいた時には、もう後の祭りでした。
おしまい
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