12月11日の日本民話
カッパの贈りもの
山口県の民話
むかしむかし、カッパが海や川にたくさん住んでいて、いろいろイタズラをしていたころのお話しです。
ある日、一頭のウマが川辺で草を食べていると、川の中からカッパが現れました。
ウマが好きなカッパは、たずなを自分の体に結びつけてウマを川にひきずり込もうとしました。
ビックリしたウマは、とある百姓(ひゃくしょう)の家にとび込みました。
ウマが急に飛び込んできたので、おどろいた家の人がよく見ると、たずなの先にカッパがぶらさがって、
「ふうふう」
と、言っています。
「ははん。また悪さをしようとしたな」
お百姓がなぐりつけようとすると、カッパは手を合わせて命ごいをしました。
「どうか助けてください。もう二度と悪さはしませんから。お願いです」
あわれに思ったお百姓は、なぐりつけるのをやめると、こらしめのために縁側(えんがわ)の柱にしばりつけておきました。
タ方になって、その家の娘がカッパがいるのを知らずに、ウマに水をやろうとして通りかかり、カッパを見ておどろいて、おけの水をカッパにうちかけてしまいました。
水はカッパの元気のみなもとです。
頭のお皿に水がたまったカッパは、たちまち元気を取りもどして、つなを切って逃げてしまいました。
さて、しばらくしてその娘がお嫁に行くことになりました。
その仕度(したく)にいそがしいある日、ふと見ると縁側に誰からともわからないタルに入ったお酒がおいてありました。
次の晩には、大きくて立派なタイが三匹おいてありました。
次の晩、不思議に思った家の人が物かげで見張っていますと、この間のカッパが水神さまのお札(ふだ)を持ってやってきました。
カッパが助かったお礼に、娘の嫁入の祝いを持ってきていたのです。
この事が村中で大評判になり、大勢の人がカッパがやってくるのをのぞき見するようになったので、カッパは二度と現れなくなったという事です。
おしまい
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