きょうの日本民話
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12月17日の日本民話

別所温泉

別所温泉
長野県の民話

 むかしむかし、長野のある山のふもとの村里から、夜になると光がたちのぼりました。
 そして地の底が、ゴウゴウとうなりだして、やがて大きな穴が地面に開き、そこから火が燃えあがって、黒い煙がふきあがったのです。
 火と黒い煙は、日ごとにはげしくなっていきました。
 火の熱さで里の家々は火事になり、犠牲になる人たちも出てきました。
 困った里の人たちは、都の朝廷に訴えました。
 それを聞いた天皇は、星の動きなどから物事を占う天文博士に占わせると、
「まことに不思議なことですが、仏の縁(えにし)によるものです」
と、いうのでした。
 仏さまに関係があるということなので、天皇は偉いお坊さんを長野の村に送って、今度は祈りによって原因をさぐることにしました。
 すると山のふもとの穴から、これまでふきあげていた黒煙にかわって紫色の煙がたちのぼり、雲になって天にのぼっていきました。
 天にのぼった紫色の雲は、ゆっくりと山の方へたなびいていきます。
「むかしから紫色の雲は、おめでたい雲だといわれておるが」
 お坊さんはそう言うと、いっそう声をはりあげてお経を唱えました。
 そのとき、紫色の雲の中から、光りかがやく女性の仏さまが現れたのです。
 そしてお坊さんに、こう告げました。
「われは、世をすくう観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)です。われの像をつくって、この地にまつりなさい。さすれば、よいことが起こるであろう」
 いいおわると仏さまは、紫色の雲とともに、天にのぼっていきました。
「では、さっそく観世音菩薩さまをつくってみよう」
 お坊さんは、すぐに一体の観世音像を彫り上げて、その像をお堂にまつりました。
 すると穴から出ていた火と煙は、だんだん弱くなって消えていきました。
 そして今度は、黒くてあたたかい湯がゴボゴボと、地の底からわき出してきたのです。
 このあたたかい湯が、のちに病気治療によく効く別所温泉になったのです。

おしまい

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