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2008年 4月22日の新作昔話

ホジャおじさんのこの世の終わり

ホジャおじさんのこの世の終わり
トルコの昔話

 むかしむかし、トルコの国に、ナスレッディン・ホジャという、とても変わった人がいました。
 このホジャおじさんには、わが子のように可愛がっている一匹の子ヒツジがいました。
 ある時、いたずら好きな若者が、この子ヒツジに目をつけて仲間に言いました。
「ホジャをうまくだまして、あの子ヒツジを料理して食うことにしようぜ」
「そりゃあ賛成だ。だが、だれがホジャをだますんじゃ? あいつはあれで、なかなかの知恵者じゃぞ」
「まかしとけ! そいつはこのおれが引きうけた。以前の恨みを晴らしてやる」
と、いたずら好きな若者が言いました。
 実はこの若者、子どもの頃にホジャおじさんと『だまし勝負』でだまされた少年です。
 そして若者たちはホジャおじさんの所へ行くと、まじめな顔で言いました。
「のう、ホジャ。お前知ってるか? 町の聖者さんの話だと、あと二、三日で、この世の終わりが来るそうじゃ。どうせ世の終わりがくるなら、今のうちにいい思いをしておいてはどうだ?」
「おお、この世の終わりなら、確かにいい思いをせんとな」
「じゃろう。そこでさっそくじゃが、みんなでお前の子ヒツジを食うことにせんか?」
「それはだめじゃ! こいつを食うなんて、とんでもない!」
 ホジャおじさんは断りましたが、まわりからみんなが頼むので、仕方なくホジャおじさんも承知して、明日、若者たちに子ヒツジをごちそうすることにしたのです。
 次の日、若者たちがホジャおじさんの家にやってくると、さっそくホジャおじさんが料理のたき火をはじめました。
 それを見た若者たちは大喜びで、
「よし、料理が出来るまで、みんなで遊ぶとしよう」
と、上着を脱ぎすてて、とんだりはねたりしました。
 しばらくすると、料理のいいにおいがしてきたので、若者たちはたき火のまわりに集まってきました。
 ところが、どうでしょう。
 さっき脱ぎすてた上着が、どこにも見当たりません。
 みると、上着はたき火の中で黒こげになっています。
「だれだ! だれがやったんじゃ!」
 すると、ホジャおじさんがいいました。
「わしだ。それがどうかしたのか?」
「どうかしただと? もうすぐ寒い冬だぞ。上着がなくては冬が過ごせん。どうしてくれるんだ!」
 若者たちがつめよると、ホジャおじさんは、すずしい顔で言いました。
「みんな、何をそんなに怒っておるんだ。あしたはこの世の終わりじゃろ。明日で終わるのに、冬が来るはずないだろうが」
「そっ、それは・・・」
 若者たちは、何も言い返せませんでした。

おしまい

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