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2008年 4月24日の新作昔話
ホジャおじさんのゆで卵裁判
トルコの昔話
むかしむかし、トルコの国に、ナスレッディン・ホジャという、とても変わった人がいました。
ある時、ホジャおじさんの友だちが、食べ物屋で、ゆで卵二個とパンを一個食べたのですが、お金を払う時になって、財布を忘れてきたのに気がつきました。
「お金は、あとでもいいですよ」
店の主人がそう言ってくれたので、今度きた時に払う約束をして帰りました。
ところがすぐに、友だちは急用で旅に出ました。
一年ぶりに帰ってきた友だちは、さっそく食べ物屋をたずねました。
「すみません。ずっと前に借りたお金を返したいのだけど、いくらでしたかね?」
すると主人は、なにやら計算をしていましたが、
「はい、全部で金貨二十枚いただきます」
「えっ? わたしが食べたのは、ゆで卵二個とパンが一個ですよ。そんなに高いはずはないでしょう」
「へい、確かにそうですが、なにしろ、あれから一年以上もたっていますからねえ。あの時、あの卵をあなたが食べなかったとしたら、二個の卵からヒナがか えって、やがて二羽の親鳥になりますでしょう。その親鳥が次々に卵をうんで、それがまたヒナになって親鳥になる。こうやってかんじょうすれば、金貨二十枚 でも、安いくらいですよ」
「そんなバカな話があるか! わたしは卵二個とパンを一個の代金しか、払わないぞ!」
「いいえ、どうしても払ってもらいますよ」
それでとうとう裁判で、どちらが正しいかを決めてもらうことになりました。
困った友だちは、ホジャおじさんのところへ助けをもとめてきました。
わけを聞いたホジャおじさんは、
「よし、わしにまかしておきなさい。裁判では、きみの弁護士になってあげるよ」
そして、裁判の日になりました。
ところがいくら待っても、ホジャおじさんが姿を見せないのです。
「お前の弁護士はまだか? いやに遅いな」
裁判官がイライラしはじめたところへ、ホジャおじさんがやってきました。
「どうしたのじゃ! こんなに遅れるとはけしからん!」
「はい、実は畑で大豆を作ろうと思って、畑にまく豆を今までゆでていたのです。ところが、これがなかなか煮えなくて」
「なんじゃと? 煮た豆を畑にまくだと? 煮た豆から大豆がとれるか。ばかなことを言うな」
するとホジャおじさんが、すました顔で言いました。
「だって裁判官さま、この裁判は、ゆで卵からヒナがかえって、それがどんどん増えていったらという話でしょう。ゆで卵からヒナがかえるのなら、ゆでた豆からだって、大豆がとれるはずでしょう」
「うーん、なるほど。たしかにその通り」
裁判官は、ホジャおじさんの説明に感心しました。
こうして裁判は、友だちの勝ちになったのです。
おしまい
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