きょうの新作昔話
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2008年 5月13日の新作昔話

菊の妖精

菊の妖精
中国の昔話

 むかしむかし、中国に馬子才(ばしさい)という人がいました。
 子才(しさい)は菊の花が大好きで、菊の苗を育てては上手に花を咲かせました。
 また、珍しい菊があると聞くと、どんな遠い所へでも出かけて行って、それを買ってきました。
 あるとき子才が、やはり菊の苗を買いに旅へ出て、買い物をすませた帰り道での事です。
 大変上品な若い男がロバに乗って、ほろ馬車のあとについて行くのに会いました。
「あの、どこまで行くのですか?」
と、子才は話しかけました。
「はい。姉と一緒に、引っ越しをしようとしているのです」
 子才と若い男は道連れになって、いろいろ話をしているうちに、その男が菊の事なら子才に負けないくらい、くわしく知っているのがわかりました。
 子才は、うれしくてなりません。
「ちょうどいい。引っ越しをなさるのなら、わたしの家の庭のはずれに一軒、空いている家があります。小さな家ですが、そこへ引っ越してきませんか?」
と、子才はいいました。
「それはありがたい話です。では、姉にも聞いてみます」
 若い男は、ほろ馬車の中にいる姉さんと相談を始めました。
 子才はその女の人を、ちらっと見て驚きました。
 その美しい事といったら、絵に描いた天女のようです。
 やがて話が決まって、若い男とその姉とは、子才の家の庭のはずれに住むことになりました。
 若い男の名は陶(とう)といい、姉の名は黄英(こうえい)といいました。
 この兄弟は、あまりお金を持っていなかったので、それで陶は子才の家の菊作りを手伝い、姉は料理や裁縫などをして毎日を暮らしました。
 陶は子才が感心するほど、よく菊の世話をして、子才の家の畑で枯れてしまった菊があると、それをもらって自分の家のそばに植えました。
 やがて、秋になりました。
 陶のおかげで、子才の家の畑の菊は、今までになく美しく咲きました。
 ある日、子才は陶の家のそばへ行って見て、びっくりしました。
 枯れてしまったはずの菊が立派に生き返り、美しい花を見事に咲かせているのです。
「枯れてしまった菊から、よくこんなすばらしい花が咲いたものだね」
と、子才は、思わずほめました。
「はい。わたしたち兄弟は、あなたにお世話になっているばかりで、ほんとに申しわけありません。それで咲いたこの菊を売って、少しでも自分たちで暮らしを立てたいと思うのですが」
「それはいけない。花を売ってお金をもうけようなんて、そんなことは、本当に花をかわいがる人がすることではないよ」
 でも陶の家へは、花を買う人が毎日、何人も来るようになりました。
 花を買った人たちは、美しい花に大喜びです。
 そうなると、子才は何もいわなくなりました。
 そのうちに子才は、陶の姉さんを自分の奥さんにしました。
 そこで陶一人だけが、庭の小さな家に住むようになりました。
 姉さんと別れた陶は、たくさんお酒を飲むようになりました。
 陶は一人になって、さびしかったに違いありません。
 ある日、陶はたいそうお酒を飲み、そのまま酔いつぶれてしまいました。
 するとその体が、みるみるうちに菊になってしまったのです。
「あっ!」
 それを見た姉さんも、小さな悲鳴をあげると、みるみるうちに菊になってしまったのです。
 実はこの兄弟、人間にあこがれた菊の妖精で、今まで人間に姿を変えていたのでした。

おしまい

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