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2008年 9月10日の新作昔話

愛犬の神通力

愛犬の神通力
京都府の民話

 むかしむかし、藤原道長(ふじわらみちなが)という人が、京の都にお寺をたてました。
 道長は白い犬を飼っていて、散歩のときはいつもこの犬を連れ歩いて、可愛がっていました。
 ある日の事、道長は自分がたてたお寺の門をくぐって、お堂へお参りに行こうとすると、連れている犬が急にそわそわして主人の前で何度もほえたてるのです。
「これこれ。どうしたんじゃ?」
 道長は立ちどまって言いましたが、特にかわった事もないようなので、また歩き出そうとしました。
 すると今度は、主人の衣のすそを口にくわえて、強くその場にひきとめるのです。
 この犬がこんな事をするのは、今まで一度もありません。
(これは、何か異変を伝えようとしているに違いない)
 道長はそう思うと、その場から一歩も動かないようにして、お供の者に持ってこさせた座り台に腰をおろしました。
 そして知り合いの占い師を呼び寄せて、事情を話しました。
 すると占い師は、しばらく目を閉じていましたが、やがて口をひらきました。
「あなたをよく思っていない者が、呪いの仕掛けをこの門の下の土の中にうめたのです。あなたがそこを通ると、呪いで悪い事がおこります」
 占い師はそう言って、道長の目の前の土を掘り起こしました。
 すると、ふたつあわせた土の器に、黄色い紙のこよりを一文字にかけたものが出てきました。
 器の中には、呪いの呪文が書いてありました。
 占い師は、ふところから取り出した紙を鳥の形にちぎると、なにやら呪文を唱えながら空へむかって投げました。
 すると鳥の形の紙切れは、たちまち一羽のシラサギになって南へ飛んでいったのです。
「シラサギを追いなさい。あのシラサギが落ちたところに、この呪いを仕掛けた者がおります」
 占い師が言うので、道長のお供の者たちが追っていきました。
 紙のシラサギは、ある町の小さなお堂の屋根の上に落ちました。
 お堂にふみこんでみると、年を取った一人の坊さんがいました。
 問いつめられた坊さんは、道長にうらみを持つ者にたのまれて、呪いの仕掛けをしたことを白状したのです。
 占い師は道長に、こう言いました。
「犬というのは、小さいながらも神通力を持っております。呪いの仕掛けに気づいて、主人のあなたの足をその前で止めさせたのです」
 それから道長は愛犬の白い犬を、ますますかわいがるようになったそうです。

おしまい

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