きょうの日本民話
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2008年 11月13日の新作昔話

天田槍(あめのひぼこ)

天日槍(あめのひぼこ)
兵庫県の民話

 むかしむかし、新羅の国(しらぎのくに→朝鮮)に、天日槍(あめのひぼこ)という王子がいました。
 王子には美しい妻がいましたが、日槍(ひぼこ)はちょっとした事から、妻をののしるようになったのです。
 これに耐えられなくなった妻は、
「私はあなたの妻としては、ふさわしくありません。私は国へ帰ります」
と、言い残して、一人こっそり船に乗り、日本の灘波(なにわ→大阪)に帰ったのです。
 これを知った日槍(ひぼこ)は、自分も妻を追って日本へと渡ったのですが、灘波に近づくとその土地の神々が邪魔をして、どうしても上陸できません。
 そこで仕方なく、日槍は但馬の国(たじまのくに→兵庫県)に船をつけると、そこに落ち着くことになったのです。
 やがて時は流れて、日槍は土地の娘と結婚して、子孫も栄えていました。
 ところがその当時の豊岡や出石盆地のあたりは、一面が泥の海だったので、とても生活しにくい土地でした。
 そこで日槍は五社大明神(ごしゃだいみょうじん)の神々と力を合わせて、この地を開拓しようと考えたのです。
 まずは、来日岳(くるひだけ)の下流を切り開くことになりました。
 そこには固くて大きな岩がさえぎっているため、水がせき止まって瀬戸(せと)になっているのです。
 みんなで力を合わせて横たわっている大岩をとりのぞくと、泥水がすさまじい音をたてて日本海へと流れ出しました。
 やがて水の引いたあとには、肥えた広々とした平野が少しずつ広がっていきます。
 日槍も神々も大喜びで、その様子をながめていました。
 そのとき、残った水の中ほどがざわざわと大きく揺れ動いたかと思うと、渦巻きとともに水煙をあげて頭を突き出したものがありました。
 見ると体の周りが二メートルはありそうな、恐ろしい大蛇ではありませんか。
 みんなが息をのんで見ていると、大蛇は下流に向かって泳ぎ出して、せっかく切り開いた瀬戸の口に体を横たえて、水の流れをせき止めてしまったのです。
 みんなは大いに怒って、この大蛇を岸に引きづり上げると、胴体を真っ二つに引きちぎってしまいました。
 こうして開拓は成功し、泥海のようだった土地は人の住めるりっぱな土地になったのです。
 その後、日槍は出石神社に祭られて、開発の神として今でも多くの人々の信仰を集めているのです。

おしまい

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