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2009年 4月17日の新作昔話

キノコ問答

キノコ問答
吉四六(きっちょむ)さん

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 きっちょむさんの村では、秋になると椎茸(しいたけ)がたくさん採れました。
 椎茸(しいたけ)は人気があるキノコなので、村人はこの椎茸を売ってお正月の準備をするのでした。
 ところが、今年の秋は椎茸が不作な上に、殿さまから、
《一軒から千本ずつ、キノコを献上せよ》
と、いうおたっしがありましたので、村人は大変困って、きっちょむさんに相談しました。
 すると、きっちょむさんは、
「なあに。何も心配する事はない。山で、この春に芽生えた木の苗を採ってくればいいんだよ。それが木の子(キノコ)じゃ」
と、言いました。
 たしかに木の苗も、木の子どもなので、『キノコ』に違いありません。
「なるほど、確かにきっちょむさんの言うとおりだ」
 そこで村人たちは、千本ずつ木の苗を採ってきて、それをきっちょむさんがたわらに詰めて、お城へ持って行きました。
 さて、きっちょむさんが持って来たたわらを開けた役人は、中身を見て怒り出しました。
「きっちょむ! なんだこれは?!」
「はい。おたっし通りの、木の子でございます」
「木の子? きのこ、キノコ、木の子・・・。バカ者! キノコと言えば、椎茸の事に決まっているだろう」
「あっ、なるほど、キノコとは、椎茸の事でしたか。その椎茸なら、残念ながら村人たちが、もうみんな売ってしまった後です」
 それを聞いた役人は、ちゃんと説明しなかったこちらも悪かったと思ったのか、
「まあ、では仕方がない。ただし、来年は間違わぬようにいたせよ」
と、許してくれました。
 するときっちょむさんは、恐る恐る聞き返しました。
「お役人さま。では、キノコと言えば、椎茸の事、椎茸と言えば、キノコの事でございますな」
「その通りじゃ」
「わかりました。では、来年は間違えません」
 きっちょむさんはそう言って、村へ帰っていきました。
 さて、次の年の秋になりました。
 お城の役人は去年の事があったので、今度は間違えないように、
《一軒から千本ずつ、椎茸を献上せよ》
と、おふれを出しました。
 ところが今年も椎茸が不作だったので、きっちょむさんはまた山から木の苗を集めさせて、それをお城へ持っていきました。
 それを見た役人は、まっ赤になって怒りました。
「こら、きっちょむ! 今年もやはり、キノコではないじゃないか!」
 すると、きっちょむさんは、なんで怒っているのかがわからないと言う様に、聞き返しました。
「あの、去年、キノコといえば、椎茸の事、椎茸と言えば、キノコの事かとお伺いしましたら、『さよう』と、おっしゃいましたねえ」
「いかにも、その通りだ」
「だから今年は、椎茸を献上せよとのおたっしなので、キノコを持って来たのですが。なにか間違っていましたか?」
「・・・あっ、なるほど」
 たしかに、きっちょむさんの言う事は間違ってはいません。
「しかし、それはだな。・・・よし、少し待っておれ」
 困った役人は、この事を殿さまに伝えました。
 すると、それを聞いた殿さまは、
「それは、おもしろい男だな。よし、会ってみるから連れて参れ」
と、言って、きっちょむさんを庭先に呼んだのです。
 そこできっちょむさんは、村人が椎茸を売って正月の準備をする事と、椎茸が不作で困っている事を殿さまに説明したのです。
「うむ。そう言う事か。よしわかった。今後、お主の村は椎茸の献上は無しにしよう」
 こうして、きっちょむさんの村はその年から、椎茸を献上しなくともいい事になったそうです。

おしまい

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