きょうの新作昔話
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2009年 5月13日の新作昔話

やさしい子どもと山の神

やさしい子どもと山の神
中国の昔話

 むかしむかし、中国のある村に、お母さんと子どもが住んでいました。
 子どもは十二歳になったとき、お母さんにこう言いました。
「お母さん、今までずい分お世話になりましたが、これからはわたしが働いて、お母さんを助けます」
 そして次の日から、子どもはお母さんにお弁当を作ってもらい、山へ仕事に行くようになりました。
 ある日の事、子どもが切り株にお弁当を置いて木に登り、枯れ枝を折っていたときです。
 ふと見ると、切り株におじいさんが座っていて、子どものお弁当をムシャムシャと食べているのです。
 子どもは自分のお弁当を取られてびっくりしましたが、でも、ニッコリ微笑むと、
「腹が空いているんですね、どうぞ、全部食べてください」
と、おじいさんに言いました。
 そして家に帰って、お母さんにその事を話すと、お母さんは、
「それは、良い事をしましたね」
と、次の日にはおじいさんの分も、お弁当を作って持たせてくれました。
 そして子どもが木に登って仕事をしていると、またあのおじいさんが出て来て、今度はお弁当を二つとも、ペロリと食べてしまったのです。
 それでも子どもは、やさしく笑って言いました。
「いいですよ。よほどお腹が空いていたのですね」
 その次の日には、お母さんと出かける用事があったので、子どもはおじいさんにお弁当を届けるためだけに山へ出かけて行きました。
 すると、おじいさんが言いました。
「わざわざ、わしのためだけにやってくるとは。お前は本当に心のやさしい感心な子じゃ。実は、わしは山の神なのじゃ。お前には今までのお礼として、良い事を教えよう。お前はこれから天竺の立派な寺へ行くがよい。天竺に着くまでお前は人に何かを頼まれるじゃろう。その頼み事を持って寺に行くのじゃよ」
 おじいさんがそこまで言うと、どこかへと消えてしまいました。
 子どもは家に帰ると、その事をお母さんに話しました。
 するとお母さんは、
「それなら、すぐに天竺へ出かけなさい」
と、子どもを連れて長者のところへ米とみそを借りに行きました。
 話を聞いた長者はうなずいてから、子どもに頼みました。
「それでは天竺のその寺に行ったら、もう三年も寝たきりの娘の病が治るようお祈りして来てほしい」
「はい。わかりました」
 子供は長者の頼みを引き受けて、さっそく旅に出ました。
 旅に出てから何日かしたある夜、子どもは大きな屋敷に泊めてもらいました。
 そしてこれから天竺の寺へお参りに行くことを告げると、屋敷の主人は子どもに頼みました。
「庭の桃の木に、実がならなくなってしまったのです。どうか、また桃を売ってくらせるよう、天竺のお寺でお祈りしてきてください」
「はい。わかりました」
 子どもは頼みを引き受けて、また旅立ちました。
 しばらく行くと、橋も舟もない大きな川がありました。
 むこう岸に女の人がいるので、子どもはたずねました。
「そちらへは、どうやって行くのですか? 私はこれから天竺の寺にお参りに行きます」
 すると女の人は、川の上をふわふわ飛びながら子どもの方へやって来ました。
 よく見ると、女の人は顔中がはれあがっています。
「わたしは陸に千年、川に千年、海に千年生きた者です。どうにかして天に昇ろうと苦労しているうちに、顔がはれてしまいました。天竺のお寺でどうしたら天に昇れるか、聞いてきてください」
「はい。わかりました」
 子どもが引き受けると、女の人は子どもを頭の上に乗せて、川をフワフワ飛んで向こう岸に連れて行ってくれました。
 子どもは女の人の頭から降りて、丘の上を見ました。
「あ、あれは!」
 丘の上には見たこともない、立派なお寺が建っています。
 このお寺こそ、天竺のお寺に間違いありません。
 子どもは大喜びで、丘をかけ登りました。
 すると、お寺の前に、あのお弁当を食べたおじいさん、いいえ、山の神が立派な服を着て、にこにこと笑いながら立っているではありませんか。
 山の神は、子どもに言いました。
「ここまでよく来たね。さあ、頼み事をされたじゃろう、話してごらん」
「はい」
 子どもは、長者の娘の病気の事、桃の木の事、天に昇れない顔のはれた女の人の事を話しました。
 すると山の神はうなずいて、こう言いました。
「長者の娘には、まわりにいる男たちの誰か一人に、盃(さかづき)を渡すように言うのじゃ。受けとった男に財産をやって婿にすれば、娘の病気はすぐ直るじゃろう。桃の木は、木の根元に金のつぼが二つ埋めてあるはずじゃ。それを掘りおこして一つを他の人間にやれば、すぐに実がなるじゃろう。天に昇れない女にはこう教えるのじゃ。大切にしている宝物の玉を人間にやるのじゃ。そうすれば、すぐに天に昇れるとな」
 言い終わると山の神は、あっという間に消えてしまいました。
 さてその帰り道、子どもは顔のはれた女の人に、宝物の玉を人間にやるよう教えました。
 すると女の人は、子どもに光り輝く玉をあげました。
 するとたちまち、女の人は美しい顔になって、空へ空へと昇って行ったのです。
 次に子どもは泊めてもらった屋敷へ走って行くと、木の根元の金のつぼを掘り出して、一つを誰かにあげるよう教えました。
 屋敷の主人がさっそく掘ると、確かに金のつぼが二つ出てきました。
 そしてその金のつぼを一つ、子どもに渡すと、桃の木にはみるみるうちに桃の実が実ったのです。
 子どもは金のつぼをもらって長者のところに帰ると、盃を娘に持たせ、男の中の誰かに渡すよう教えました。
 もちろん、渡された男には財産をやって、婿にすることもちゃんと伝えました。
 それを聞いた病気の娘は弱々しい手で盃を持つと、盃を子どもに渡そうとしました。
 子どもは驚いて、
「駄目ですよ。わたしになどもったいないです」
と、断りましたが、長者も娘も、
「ぜひとも、お願いします」
と、強くすすめるので、子どもは盃を受けとりました。
 するとそのとたん、真っ白だった娘の顔に、ぽっと赤みがさしました。
 そして寝たきりだった娘は起き上がると、元気に舞いを舞ってみせたのです。
 長者は大喜びで、子どものお母さんもよんで、みんな一緒に長者屋敷で暮らすように言いました。
 それから子どもと長者の娘は夫婦になり、みんなで仲良く幸せにくらしたという事です。

おしまい

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