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2009年 5月18日の新作昔話

宝を迎える村人たち

宝を迎える村人たち
ジャータカ物語

 むかしむかし、ある村に、一人の貧しい商人がいました。
 みんなは、その貧乏な男をきらって、男がたずねて行っても家の中へは入れずに追い返すのでした。
「こんな意地の悪い人たちのいる所から離れて、どこかよそでかせいでこよう」
 そう考えた男は、遠い国へいって商売を始めました。
 そして頑張った男は、何年かたつと大金持ちになりました。
 そこで、久しぶりに自分の村に帰る事にしたのですが、この男のうわさを聞いた人々は、今度は男のためにごちそうの用意をして、途中まで男を出迎えに行ったのです。
 貧乏だった以前とは、大違いの態度です。
「金があると知るとこれとは、なんて心の醜い奴らだ。・・・よし、少しからかってやろう」
 そこで男は、わざとボロボロの服を着て、行列の先頭を歩いていきました。
 村の人々は男が大金持ちになったと聞いているので、そんなボロ服を着ているとは夢にも思いません。
 だから出迎えた人たちは、だれも男に気がつかないのです。
 行列は来るのですが、いくら探しても男が見つからないので、村人たちは先頭の男に、
「もしもし、ご主人さまは、どこにいらっしゃるのですか?」
と、たずねました。
 すると男は、とぼけた顔で、
「ああ、ご主人でしたら、一番後ろにいらっしゃるはずです」
と、答えると、さっさと歩いて行きました。
 村人たちは一番後ろの人が来るのを待っていましたが、一番後ろの人は、どうみても主人とは思えないのです。
 そこでまた、その人にたずねてみました。
「あの、どの方が、ご主人さまですか?」
 すると、その人は、
「ああ、ご主人なら、行列の一番前にいる人です」
と、教えてくれました。
「なんだ、あの男がそうだったのか」
 村人たちは急いで走っていって、ようやく男に追いつきました。
 そして、
「お前さんは、わたしたちをだましたね。こうしてみんなが、わざわざ出迎えにきてやったのに、なぜそんな事をするのだ!」
と、文句を言いますと、男は村人たちを馬鹿にするように笑って、
「あなた方が出迎えたのは、一体何ですか? 少なくとも、わたしという人間を出迎えたのではないのでしょう。あなた方が出迎えた物は、わたしが持って来た、お金や宝物の方なのでしょう。それなら、一番後ろから来るラクダにつんでいますよ」
と、答えました。
 それを聞いた村人たちは、確かにそうだったので、恥ずかしくて何も言えなかったそうです。

おしまい

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