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2009年 9月14日の新作昔話

大福虫

大福虫
長野県の民話

 むかしむかし、あるいなかのお話です。
 町から来た人が、いなかの道に大福もちを一つ落としていきました。
「おや? おかしな物を落としていったぞ」
 子どもたちが大福もちを見つけて、集まってきました。
 でも、このいなかでは誰も大福もちを見た事がないので、それが食べ物だという事に誰も気がつきません。
 子どもの一人が指でさわってみると、ぐにゃりとしています。
「うへー、気味が悪いな」
 子どもたちが不思議がっていると、一人のお百姓さんが通りかかりました。
「おや? どうしたのだ? 何かいるのか?」
「うん。これ、何だろうと思って」
「どれどれ」
 お百姓さんは大福もちを手に取ってみましたが、お百姓さんにも何だかわかりません。
「うーん、このブヨブヨとした感触は、イモムシだな。これはイモムシの親玉に違いない」
「ふーん、イモムシか。でも、どうして動かないの?」
 子どもの一人が指で突っつくと、中から黒いあんこが出てきました。
 びっくりしたお百姓は、あわてて大福もちを投げ捨てて言いました。
「馬鹿! そんな事をして、指を食いつかれたらどうするんだ」
 でも、大福もちは道に転がったまま、動こうともしません。
 お百姓さんが恐る恐る近づいてみると、破れた大福餅の皮から、つぶつぶの小豆が顔をのぞかせています。
「うーん。どうやらこいつは、あずきを食う虫のようだ。こんな大きな虫なら、せっかくの小豆をみんな食べてしまうぞ。もう死んでいるようだが、念のために踏みつぶしておこう」
 そう言ってお百姓さんは大福もちを踏みつぶすと、たたられないように大福もちのお墓を作って、
「どうか、成仏して下さい」
と、みんなで手を合わせたそうです。

おしまい

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