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2009年 9月18日の新作昔話

惚れ薬

惚れ薬
宮城県の民話

 むかしむかし、ある村に、田吾作(たごさく)という男がいました。
 田吾作は働くのが大嫌いで、いつもいつも、
(ああっ、遊んでいても、米に囲まれるような暮らしがしたいなあ)
と、思っていました。
 さて、ある日の事、田吾作が川のほとりを歩いていると、一匹のイモリが飛び出してきました。
(イモリか。・・・しめた。こいつで人が好きになる薬をつくってやろう)
 田吾作はイモリを捕まえると、家に帰ってさっそく黒焼きにして粉薬にしました。
 むかしから、イモリの黒焼きを人にふりかけると、その人がふりかけた人を好きになると言われています。
(さて、だれにふりかけてやるかな)
 田吾作は粉薬を紙に包んでふところに入れると、にこにこしながら出かけていきました。
(やっぱり、金持ちの娘さんだな。金持ちの娘さんにこの薬をかけたら、おらの嫁さんにしてくれと言うにちがいない。そうすれば、遊んでいても毎日ごはんが食べられるぞ。うっししししし)
 田吾作が、そう考えながら大きなお米屋さんの前まできた時、中から美しい娘さんが出てきました。
(あれは、この家の娘だな。よしよし、この米屋の娘と一緒になってやろう。そうすれば、一生食べるのに困らないぞ)
 田吾作は、ふところから粉薬を取り出すと、おもてにつんである米だわらの後ろに隠れました。
 そんな事とは知らない米屋の娘さんが、田吾作の前にやってきました。
「それ、今だ!」
 田吾作は、粉薬を娘さんにふりかけようとしましたが、
「きゃあー!」
と、娘さんがびっくりして後ろへ飛び退いたため、粉薬は娘さんにかからないで、米だわらにかかってしまったのです。
(しまった!)
 そのとたん、米だわらの一つがごろんと転がり、田吾作の方に近づきました。
 するとほかの米だわらもごろんごろんと転がり、田吾作を追いかけます。
 こんな重たい米だわらにくっつかれたら、押しつぶされてしまいます。
「た、助けてくれえー!」
 田吾作が走って逃げますが、米だわらも負けじと、ごろんごろんと転がります。
 それを見ていた人たちは、大笑いです。
「見てみろ、あのなまけ者が、米だわらに追っかけられているぞ」
 田吾作は走って走って、走り続けました。
 そしてやっと自分の家に飛び込み、おもての戸を閉めました。
 そのとたん、
 ドッシーン!
と、おもての戸をつきやぶって、米だわらが家に飛び込んできたのです。
(ああ、もうだめだ)
 田吾作は米だわらに押しつぶされて、そのまま動かなくなってしまいました。
 こうして田吾作は、願い通り米に囲まれるようになったそうです。

おしまい

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