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2009年 9月30日の新作昔話

いたずらタヌキと木こり

いたずらタヌキと木こり
秋田県の民話

 むかしむかし、ある山奥に、木こりの小屋がありました。
 ある晩の事、木こりが寝ていたら、
♪カンコン、カンコン
と、木を切る音が聞こえます。
(うん? 今ごろ木を切るはずがない。こりゃ、きっとタヌキのいたずらだな)
 木こりがそう考えていると、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
と、木を切り倒す音がしました。
(ほう、タヌキのいたずらにしてはうまいもんだ。本当に木を切り倒しているみたいだ)
 そこで木こりは戸を開けると、外に向かって言いました。
「おーい、タヌキ。なかなかうまいぞ」
 さあ、それを聞いてタヌキは大喜びです。
 それからは毎晩のように、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
と、音をたてました。
 はじめはおもしろがっていた木こりも、毎晩こうではうるさくて眠る事が出来ず、戸を開けてどなりました。
「やい。いいかげんにしろ! うるさくて、ちっとも眠れないじゃないか!」
 ところがタヌキはやめるどころか、ますます調子にのって、今度は木を切りたおす音だけでなく、その木が転がる音まで出すようになりました。
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 次の晩になると、音はますます近くで聞こえるようになり、
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
と、小屋をゆすぶるようになりました。
(もう、かんべんできない!)
 ついに木こりは腹を立てて、タヌキをやっつける事にしました。
 その次の晩、木こりはいろりに火をおこすと、山のように炭をつみあげました。
 それから小屋のあかりを消して、戸口のつっかい棒をはずしておきました。
 そのうちに炭はがんがんおこって、いろりがまっ赤になりました。
 木こりが眠ったふりをしていると、やがておもての方から、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
と、いう音が聞こえてきました。
 音はだんだん近づいてきて、小屋をゆさぶりはじめました。
 それでも木こりはがまんして、眠ったふりをしていました。
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 大きな木が、戸にあたるような音がしました。
(今だ!)
 木こりは飛び起きると、ガラリと戸を開けました。
 そのとたん、戸を叩こうとしたタヌキが勢いあまって小屋の中に転がり、そのままいろりの中へ落ちたのです。
「あちあちあちー!」
 タヌキはむちゅうでいろりから飛び出すと、しっぽからけむりを出して逃げていきました。
「ははーん。ざまあみろ!」
 こうして次の晩からは、もう音がしなくなり、木こりは安心して眠る事が出来たのです。

おしまい

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