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2009年 10月9日の新作昔話
チョウチョのお嫁さん探し
アンデルセン童話 → アンデルセンについて
むかしむかし、あるところに、一匹のチョウチョがいました。
お嫁さんが欲しいと思ったチョウチョは、可愛い花の中からお嫁さんを選ぶ事にしました。
「さて、どの花がいいかな?」
でも、花はたくさんありすぎて、どの花を選んで良いかわかりません。
そこでチョウチョは、側にいたヒナギクに尋ねました。
「ねえ、ヒナギクの奥さん、ぼくは、どの花をお嫁さんにしたらいいのでしょうか?」
するとヒナギクは、
「ふん! 失礼ね!」
と、横を向いてしまいました。
実はヒナギクは、まだ若いお嬢さんだったので、チョウチョに奥さんと言われて怒ってしまったのです。
仕方なくチョウチョは、お嫁さん探しの旅に出ました。
「クロッカスもいいな。アネモネもきれいだな。でも、ぼくのお嫁さんには向いていないな」
それからチョウチョは、スミレやチューリップやスイセンに出会いましたが、どの花も気に入りませんでした。
やがてチョウチョは、白いリンゴの花の上を通りかかりました。
「白いお嫁さんか。なかなか良いな。・・・いや、リンゴの花は風が吹くとすぐに散ってしまうから、やっぱり駄目だ」
次にチョウチョは、エンドウ豆の花が気に入りました。
「うーん。上品で清らかで。それにきっと、働き者にちがいない」
けれど豆のさやのはしっこで花がくちゃくちゃにしぼんでいるのを見て、チョウチョの考えが変わりました。
「今はきれいでも、年を取るとこんなに汚くなるのか。そんなのは、ごめんだよ」
やがて春が過ぎて、夏も過ぎて、ついに秋がやってきました。
けれどチョウチョのお嫁さんは、まだ決まりません。
ある日の事、チョウチョは、とてもいい香りのハッカ草が気に入りました。
そこでさっそく、ハッカ草に結婚を申し込みました。
「ハッカ草さん、どうかぼくのお嫁さんになってください」
ところがチョウチョは、あっさりと断られてしまいました。
「今さら結婚なんて嫌よ。だって、あなたもわたしも、もう、こんなにも年寄りなのよ」
さて、秋の終わりが近づき、冷たい風が吹き始めました。
寒さに震えたチョウチョは、一軒の家に入っていきました。
家の中ではストーブが燃えていて、とても暖かでした。
チョウチョは体を温めると、もう一度家の外に飛び出そうとしました。
「南へ行こう。暖かい南へ行けば、きっと素敵なお嫁さんがいるに違いない」
でも、そのとたん、
「あっ、チョウチョが飛んでいる」
と、人間の子どもに捕まってしまいました。
チョウチョのお嫁さん探しは、これでおわりです。
おしまい
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