きょうの新作昔話
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2009年 11月16日の新作昔話
人のはじまり
鹿児島県の民話
むかしむかし、世界にまだ人間がいなかった頃、火の神さまが土をこねて人の形の様な物を作りました。
「よし、形は出来上がった。明日の朝には、命を吹き込んでやろう」
人形を作って疲れた火の神さまは、そのまま寝てしまったのですが、翌朝になって見てみると、せっかく作った土の人形が壊されていたのです。
「どうして壊れたのだろう?」
火の神さまは、それから何度も何度も土の人形を作りましたが、翌朝になると必ず壊されてしまうのです。
「一体、誰がこんな事をするのだ?! 必ず犯人を見つけてやる!」
火の神さまは頑張って六体の人形を作ると、寝ないで人形の見張りをしていました。
すると夜中に地面が割れて、地面から出てきた土の神さまが、土の人形を壊し始めたのです。
火の神さまは、土の神さまに文句を言いました。
「土の神よ。なぜわたしが作った人形を壊してしまうのだ?!」
すると、土の神さまが言いました。
「そちらこそ、なぜ勝手に土を使うのだ。人形を作りたいのなら、お前の火で作ればいいだろう」
土の神さまの言い分はもっともですが、火では人形を作る事は出来ません。
そこで火の神さまが今まで勝手に土を使った事をあやまると、土の神さまも納得して、
「それでは、土を五十年貸してやろう。五十年たったら返してもらうぞ」
と、言ったのです。
こうして土から作られた人間の寿命は、五十年と決まりました。
それから火の神さまは、土の人形をたくさん作りました。
朝に作った人形は、太陽に十分さらされるので、黒い色の人形です。
昼に作った人形は、太陽にちょうどよくさらされるので、黄色い色の人形です。
夕方に作った人形は、太陽をあまり浴びていないので、白い色の人形となりました。
こうして人間には、黒い肌の人も、黄色い肌の人も、白い肌の人もいるのです。
そして始め五十年だった人間の寿命が、今のようにどんどんのびているのは、火の神さまが作った人間の数があまりにも多くなっため、土の神さまの人間を土に返す作業が追いつかないからだと言われています。
おしまい
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