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2010年 5月19日の新作昔話

本当はやさしい、けちな大金持ち

本当はやさしい、けちな大金持ち
イスラエルの昔話

 むかしむかし、ある町に、一人の大金持ちがいました。
 この人は大金持ちですが、とてもけちでした。
 貧しい人がたずねて行っても、決して助けてはくれません。
「何て、けちな男だ」
 町の人たちは、みんな大金持ちの悪口を言いました。

 さて、同じ町に、一人の靴屋がいました。
 この靴屋はとても親切で、貧しい人を見ると必ず、お金や食べ物を与えて助けてあげたのです。
 ある日の事、大金持ちが急な病気で死んでしまいました。
 町の世話役は、大金持ちを町のお墓の一番端に埋めました。
 そして葬式にも、町の人たちは誰一人行きませんでした。

 それから何日かして、一人の貧しい人が親切な靴屋を尋ねました。
「何か、めぐんでください」
 すると、靴屋がこう言ったのです。
「あげる物なんて、何もないよ」
 それを聞いた貧しい人は、びっくりしました。
「どうしてですか? あなたはいつも、わたしたちを助けてくれたのに」
 すると靴屋は、こんな事を話し出しました。
「何年か前の事だ。
 この前に亡くなったお金持ちのご主人が、お金をたくさん持って来て、こっそりとわたしにこんな事を頼んだんだ。
『このお金を、貧しい人にあげてくれ。ただし、誰のお金かは、決して言わないように』、と。
 それからも、みんなにあげるお金がなくなると、お金持ちは何度も何度もお金を持ってきてくれた。
 でももう、お金持ちがいないので、わたしにはお金がないのだよ」
 この話は、すぐに町中に広まりました。
 そしてみんなは、死んだ大金持ちの本当のやさしさを知り、すぐにお墓へ飛んでいきました。
 そして、今まで悪口を言っていた事を、心からあやまったのです。

おしまい

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