2010年 5月24日の新作昔話
仕事がはかどる食べ物
アメリカの昔話
むかしむかし、アメリカに、たくさんの山を持っている大地主がいました。
地主は朝から晩まで大勢の黒人を使って、山の木を切らせていました。
ところが、この地主はとてもけちんぼうで、
「お前たちは、これで十分だ!」
と、黒人にスープしか食べさせません。
そして、暇さえあれば山を見まわっては、黒人たちに怒鳴ります。
「なまけるな! せっせと働け!」
でも、スープしか食べていない人が、そんなに働けるはずがありません。
みんなはフラフラで、のこぎりもよくひけません。
ですから朝に切り始めた木が、お昼になっても切り終わりません。
のこぎりの音が弱々しく、
「スープー、スープー」
と、響くだけです。
それを聞いた地主は、かんかんに怒りました。
でも、これを聞いた地主の奥さんは、にっこり笑って地主に言いました。
「ねえ、あなた。あなたは、仕事がはかどるようになさりたいのね」
「もちろんだ」
「じゃあ、わたしに任せてくださいな。そして、わたしがこれからやる事を、黙って見ていてくださいな」
「よかろう」
こうして地主の奥さんは、次の日から黒人のお昼ごはんに、ごちそうを作る事に決めました。
パンを焼き、肉を焼き、おまけにケーキも焼いて、みんなにたくさん食べさせました。
すると黒人たちは、みんなたちまち元気になり、仕事がどんどんはかどりました。
そして、今まで弱々しく『スープー、スープー』と言っていたのこぎりの音は、こんなふうに聞こえるようになったという事です。
「ステーキ! パン! ケーキ! ステーキ! パン! ケーキ!」
おしまい
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