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2010年 8月6日の新作昔話

揚松明

揚松明
京都府の民話

 舞鶴(まいづる)にある雨引神社(あめびきじんじゃ)は蛇神さまとも呼ばれて、今でも八月十四日の夜になると、揚松明(あげたいまつ)を夜空にかかげる火祭りが行われています。
 これは、それにまつわるお話しです。

 むかしむかし、蛇ヶ池(へびがいけ)という池に、恐ろしい大蛇が住んでいて、村人たちを困らせていました。
 ある日の事、森脇宗坡(もりわきそうは)という侍の娘が、この大蛇に飲みこまれてしまったのです。
 怒った宗坡(そうは)は、娘のかたきを討つために、蛇ヶ池へと向かいました。
 宗坡が蛇ヶ池のほとりにやってくると、今まで静かな水面が急に波打ち始め、池の中から、それは大きな大蛇が姿を現して、口から火を吐きながら宗坡に襲いかかろうとしたのです。
「お主が、娘の仇か!」
 そこで宗坡は、ここぞとばかりに手にした弓で矢を放つと、矢は見事に大蛇の右目を射貫きました。
 これに怒った大蛇が暴れ狂いましたが、宗坡は落ちついて、もう一本の矢を大蛇の左目に命中させました。
 両目をつぶされた大蛇は、どうする事もできず、ついに宗坡の槍でとどめをさされたのです。
 ところが宗坡は、心のやさしい侍で、
「娘の仇にお主を倒したが、お主とて、生きるために食っただけのこと。もう、恨みはない。ねんごろに弔ってやろう」
と、宗坡は大蛇の死体を雨引神社(あめびきじんじゃ)に運ぶと、ねんごろに弔ってやったということです。

 それから毎年八月十四日の夜、大蛇が火を吹く姿をした揚松明が、夜空に揚げられる様になったのです。

おしまい

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