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2010年 9月20日の新作昔話

和尚の夜遊び

和尚の夜遊び
島根県の民話

 むかしむかし、ある山寺に、和尚さんと小僧が住んでいました。
 むかしのお坊さんは、女の人と結婚出来ない決まりでしたので、お寺ではなくて里に、こっそりと女房を持つ人が多くいたそうです。
 この和尚さんもその一人で、里に女房がいたのです。
 さて、夜になると和尚さんは、女房に会うために里へと下りて行きました。
 そうすると山寺には、小僧がただ一人っきりです。
 小僧は十歳だったので、まだ夜が怖くて、和尚さんがいなくなるといつも両耳を手でふさいで、布団の中でふるえていました。
 そんなある日、小僧は、
《一二三四五六七八九十》
と、自分が知っている漢字で手紙を書くと、それを和尚さんの机の上に置きました。
 翌朝、帰ってきた和尚さんはそれを見つけると、小僧に聞きました。
「小僧、夜に誰か来たのか?」
「いいえ、誰も来ていません」
「しかし、ここに《一二三四五六七八九十》と書いたのがあるが」
「・・・・・・」
「本当に、誰も来なかったのか?」
「はい」
「では、これは、お前が書いたのか?」
「いいえ、わたしは知りません。ところで、何と書いてあったのですか?」
「うむ。それがどうにもわからんのじゃ。お前はとんちが得意であろう。どうだ、この謎解きがわかるか?」
 小僧は手紙を受け取ると、しばらく考えたふりをしてから、こう言いました。
「わかりました。これは、こう読むのです。『ひとり(一)に知れ、ふたり(二)に知れりゃ、さん(三)ざんいう。知(し)れちゃ仕方ない、業(ごう)(五)をわかす。業をわかせば、ろく(六)なことにならん。質(七)屋の八(八)兵衛さんの娘にほれくさり、苦(九)労すんなよ。この住(十)職のばかたれ』」
と、得意げに読む小僧の頭を、和尚さんはペシリと叩きました。
「何が知りませんだ。これはどう見ても、お前が書いた物だろうが」
 和尚さんは小僧を叱りましたが、でもそれからは里に行っても、出来るだけ早く帰ってくるようになったそうです。

おしまい

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