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2010年 11月8日の新作昔話

竜宮の馬

竜宮の馬

 むかしむかし、あるところに、魚を取って暮らしているおじいさんがいました。
 ある日の事、おじいさんが浜辺を歩いていると、子どもたちが一匹の亀をいじめていました。
「おお、かわいそうに。どれ、お前たちに小遣いをやるから、その亀を許してやってくれんかね」
 おじいさんはそう言って亀を助けてやると、
「もう、子どもたちに見つかるんじゃないよ」
と、言って、亀を海に放してやりました。

 さて、その夜の事、美しい娘がおじいさんの家を訪ねてきて、
「わたしは竜宮の使いでございます。先ほどは亀を助けてくださってありがとうございました。お礼に、この馬を差し上げましょう」
と、小犬ほどの小さな馬をくれたのです。
 その竜宮のお使いがくれた馬はとても不思議な馬で、一日にお椀一杯のごはんを食べると、豆粒ほどの黄金を一つ産み落とすのです。
 豆粒ほどでも、黄金は非常に高価な物なので、おじいさんの暮らしはとても豊かになっていきました。

 さて、この事を知った隣の欲張りじいさんは、
「三日でいいから貸せや」
と、言って、馬を無理矢理連れて行ってしまったのです。
 そして欲張りじいさんは、
「お椀一杯のごはんで黄金を一粒なら、お椀三杯なら黄金を三粒じゃ」
と、嫌がる馬の口に無理矢理ご飯を押し込んでしまい、喉にご飯を詰まらせた馬は、そのまま死んでしまったのです。
 大切な馬を殺されてしまった心優しいおじいさんは、泣きながら馬を裏庭に埋めてやりました。
 すると馬の墓から木が生えてきて、みるみるうちに大木になったのです。
 おじいさんがびっくりしていると、どこからかこんな声がしました。
「この木を切って、臼にしてください。そしてその臼で、米をついてください」
 そこでおじいさんは木を切り倒して臼を作ると、米を入れてついてみました。
 すると米は、つけばつくほどドンドン増えていくのです。
 おじいさんは、その米を売って暮らしたので、ますます暮らしが豊かになりました。
 そこへまた、隣の欲張りじいさんがやってきて、
「三日でいいから貸せや」
と、言って、臼を無理矢理持って行ってしまったのです。
 ところが、欲張りじいさんが米をつくと、米はぬかになって、家中がぬかだらけになってしまいました。
「なんじゃ、この臼は、せっかくの米がぬかになってしまったわ!」
 欲張りじいさんはカンカンに怒って、臼を叩き割ってしまいました。
 バラバラになった臼を引き取ったおじいさんは、仕方なくそれを囲炉裏の火にくべてみました。
 すると臼は燃えて灰になるどころか、光り輝く黄金の固まりに変わったのです。
 そこへまた、隣の欲張りじいさんがやってきて、
「その臼は、わしがバラバラにしてやったんだ。だからわしの物だ」
と、言うと、まだ囲炉裏にくべていない臼を全部持って帰ってしまったのです。
 そして欲張りじいさんは、持って帰ってきた臼を一度に囲炉裏にくべてしまったから大変です。
 臼は大きく燃え上がると、黄金になるどころか多くの火の粉をまき散らして、ついには欲張りじいさんの家を火事にしてしまったのでした。

おしまい

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