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2011年 1月14日の新作昔話

しずが浦のタヌキ

しずが浦のタヌキ
山口県の民話

 むかしむかし、青海島(おうみしま)というところに、一人の漁師が八歳になる娘と二人で暮らしていました。
 娘の名前は『おしず』で、とても心やさしい娘です。

 ある日の事、この島に来た猟師が子ダヌキを生け捕りにしました。
 猟師はお昼ご飯に、その子ダヌキをタヌキ汁にしようと考えました。
 するとこれを見たおしずが子ダヌキを可愛そうに思って、父親にせがんで子ダヌキを買い取ってもらったのです。
 おしずは子ダヌキを裏山に連れて行くと、逃がしてやりました。
「もう、人間に捕まったら駄目だよ」
 おしずのおかげで命拾いをした子ダヌキは、何度も何度も頭を下げて山奥へと帰って行きました。

 さて、それから十年後。
 戦に破れて傷を負った一人の若い落武者が、この島に逃れて来ました。
 それを見つけたおしずが親身になって看護したため、やがて落ち武者の若者は元気になり、それが縁で二人は夫婦になったのです。
 ですが、やがて落ち武者狩りが始まり、追手がこの島までやってきたのです。
 そこで父親は二人を舟に乗せると、こっそりと九州へ逃がしてやりました。
 二人がいなくなり一人ぼっちになった父親は、とてもさびしい毎日を送りました。

 そんなある寒い夜の事、父親が家に帰ってみると、不思議な事に家の中は灯りがともり、ろばたの火が温かく燃えていたのです。
「おや? 一体誰が?」
 父親が家の中を見てみると、なんとそこには十年前の子ダヌキだったあのタヌキが、父親の大好きなどぶろくを持って座っていたのです。
 父親がさびしい毎日を送っている事を知ったタヌキが、父親をなぐさめようとやって来たのでした。
 それからタヌキは、毎日どぶろくを持って父親の家にやって来ました。

 しばらくしたある日、九州へ行ったおしず夫婦が、父親を迎えに島へ帰って来ました。
「お父さん、九州であたらしい家を見つけました。そこで一緒に暮らしましょう」
 そして満月の晩、三人は舟に乗って九州へ行くことにしました。
 その時、あのタヌキが裏山に駆け上り、三人を見送りながら腹づつみを打ち鳴らしたのです。
♪ポンポコポン
♪ポンポコポン
♪ポンポコポンのポンポン

 それ以来、タヌキは満月になると九州へ行った三人を思い出すのか、三人が舟で旅立った浜には満月になると、タヌキの腹つづみが鳴りひびいたそうです。
 人々はその浜をおしずの名前を取って、『しずが浦』と呼ぶようになりました。

おしまい

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