2011年 2月11日の新作昔話
ホトトギスの兄弟
鹿児島県 薩摩郡の民話
むかしむかし、あるところに、ホトトギスの兄弟が住んでいました。
弟は生まれつき体が弱かったので、優しい兄が毎日毎日山の中をかけずりまわって、山いもを掘っては弟に食べさせていたのでした。
でも、弟には兄の苦労がわからず、
「動けない自分でも、これだけうまい物を食べているのだから、自由に動ける兄さんは、さぞや、うまい物を食べておるんだろう」
と、思っていました。
さて、ある年の事、兄は働きすぎて、とうとう病気になってしまいました。
それでも弟のためにと、山いも掘りだけは休みませんでした。
その為に病気はますます重くなり、食べ物を取りに行く以外はほとんど動けなくなってしまったのです。
そんなある日の事、弟は動けなくなった兄を、いきなり殺してしまいました。
自分よりもいい物を食べていると思っている兄のお腹の中に、どんなごちそうがつまっているのか知りたかったからです。
ところが兄のお腹の中には、腐った野菜や死んだ虫など、まずそうなものしか入っていませんでした。
「そうだったのか」
この時、はじめて兄のやさしさがわかった弟は、泣きながら自分のした事を後悔しました。
そして、自分の悪い心をくやみ、
「本性になった。本性になった」
と、鳴き続けました。
こうしてホトトギスは今でも、
「本性になった。本性になった」
と、鳴いているのです。
おしまい
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