和尚と小僧のわらい話
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2011年 4月22日の新作昔話

なんじゃの買い物

なんじゃの買い物
和尚と小僧の笑い話

 むかしむかし、ある山寺に、和尚さんととんちのきく小僧さんがいました。

 いつも小僧さんにやられている和尚さんは、今度こそ小僧さんを困らせてやろうと思い、小僧さんを呼んで言いました。
「これ、すまんが町まで行って、『なんじゃ』という物を買って来てくれ」
「はい。ですが、和尚さま。『なんじゃ』って、何ですか?」
「何じゃ、お前は『なんじゃ』を知らんのか? まったく、『なんじゃ』ぐらい知らんでどうする。まあ、知らん物を買うのも修行のうちじゃ。はやく『なんじゃ』を買ってくるんじゃ」
 和尚さんはそう言うと、小僧さんを買い物に行かせました。
(さて、小僧のやつ、一体何を買ってくる事か。まあ何を買ってきても、難癖をつけてやるがな。うししししし。あいつの困った顔を見るのが、楽しみじゃ)

 さて、町に出かけた小僧さんは、首をひねりながら考えました。
「はて? 『なんじゃ』って、何だろう?」
 すると道向こうの橋の上で、町の人たちが川の中をのぞき込みながら話していました。
「何じゃ、何じゃ?」
「ありゃ、何じゃ?」
 小僧さんがのぞいて見ると、川の岸の杭に変な物が引っかかっています。
 みんなが騒いでいると、一人の男が言いました。
「あれは、死んだ馬の腹わたさ」
「なんだ、馬の腹わたか」
「たぶん、馬の皮や馬肉を取った残りの腹わたを、だれかが川に捨てたのだろう」
 それを聞くと、みんなはつまらなそうに帰って行きました。
 しかし、その場に残った小僧さんはニッコリです。
「確か今、『ありゃ、何じゃ』って言ったな。そうか、『なんじゃ』とは、これだな!」
 小僧さんは川におりて行くと、浮いている馬の腹わたを棒ですくいました。
「よし。いい物が見つかったぞ」
 小僧さんは馬の腹わたを、ていねいにふろしきに包みました。
 そしてふろしき包みを棒の先に引っかけると、お寺に帰って行きました。

「和尚さま。ただ今、戻りました」
「おお、戻ってきたか。して、どうじゃ。『なんじゃ』を買ってきたか?」
 すると小僧さんはニッコリ笑って、ふろしき包みを和尚さんに差し出しました。
「はい。これです」
 それを受け取った和尚さんは、
(さて、一体何を買ってきた事か。もっとも何が入っていても、難癖をつけてやるがな)
と、考えながら、ふろしき包みを開けてびっくりです。
 和尚さんは思わず、
「こりゃ、何じゃ?!」
と、小僧さんに尋ねました。
「はい。その『なんじゃ』を、買って来ましたよ」
「だから、こりゃ、何じゃ?!」
「ですから、『なんじゃ』ですよ。たった今、和尚さまも『なんじゃ』って、おっしゃったじゃないですか」
 小僧さんの言葉に、和尚さんは、
「うーん。それは、確かに・・・」
と、言ったきり、何にも言い返せませんでした。

 こうして和尚さんは、また小僧さんに負けてしまいました。

おしまい

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