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2011年 9月30日の新作昔話

金歯の小人

金歯の小人
徳島県の民話

 むかしむかし、ある漁師が漁の途中で嵐に出会い、今まで誰も来たことがない島へと流されました。
「よし、舟は何とか無事だな。今夜はこの島で過ごして、明日の朝早くに帰ろう」
 舟を下りた漁師が草むらで寝ていると、すぐそばの草むらから何やら人の声が聞こえてきます。
「はて、この島に人がいたのかな?」
 漁師が草むらをかき分けてみると、そこには小鳥ほどの大きさの小人たちがいて、その先にいるイタチが小人たちを狙っていたのです。
(なんだ? おれは夢でも見ているのか?)
 漁師は首を傾げましたが、とにかくその小人たちを助けようと、イタチを追い払ってやりました。
 すると小人たちは漁師が初めて聞く言葉でお礼を言うと、口を開けてにっこり笑いました。
 その開いた口の中を見て、漁師はびっくりです。
 なんとその小人たちの歯は、全て金で出来ていたのです。
 小人たちは自分たちの金歯を次々と抜くと、お礼のつもりなのか、漁師の前に差し出しました。
 その時、漁師は目を覚ましました。
「なんだ、さっきの小人は夢か。小さくてもあれだけの金歯があれば、それなりの金になったのに。・・・いや、夢じゃないぞ!」
 目覚めた漁師のすぐ横に、小人たちの金歯が置いてあったのです。
 漁師はその小人の金歯を持って帰ると、町へ行ってとても多くのお金と交換しました。

 さて、その話を聞いた友だちの欲張り漁師が、自分も小人の金歯を手に入れようと、漁師から聞いた島へとやって来ました。
「お人好しのあいつは小人にもらったわずかな金歯で満足していたが、おれはそうはいかないぞ。小人の奴を全部捕まえて、全員の金歯を抜き取ってやる」
 こうして欲張り漁師は一晩中かかって小人たちの村を見つけると、小人たちに襲いかかって、小人たち全員の口から金歯を引き抜いたのです。
「あはははは。これだけ金歯があれば、おれは大金持ちだ」

 次の朝、欲張り漁師は町へ行くと、小人たちから引き抜いた金歯の入った袋を差し出して言いました。
「この袋の金歯を、金に換えてくれ」
「へえ、金歯ですか」
 受け取った問屋は、その袋の中をのぞきました。
 そしてけげんそうな顔で、欲張り漁師に言いました。
「何が金歯ですか。これは、ただの歯ではありませんか。こんな物は、一文にもなりませんな」
「なに、そんなはずは・・・」
と、言いかけた欲張り漁師は、口の中がすーすーして、うまくしゃべれない事に気づきました。
「まっ、まさか・・・」
 欲張り漁師が自分の口の中に指を入れてみると、何と自分の口には歯が一本もありませんでした。
 そして小人の金歯が入っているはずの袋を開けてみてると、中には自分の歯が入っていたのです。

おしまい

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