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2011年 11月16日の新作昔話

働かない使用人

働かない使用人
千葉県の民話

 むかしむかし、大穴村と言うところに、岡本という名前の大地主がいました。
 この大地主の旦那はとても大きな赤鼻だったので、みんなから『天狗さま』と呼ばれていました。

 さて、屋敷には十数人の使用人がいましたが、旦那の天狗さまが優しい事を良い事に、あまり働こうとはしないのです。
「どうすれば、みんな真面目に働いてくれるのだろうか?」
 頭を悩ませた天狗さまは、ある朝、使用人たちに言いました。
「今日は田の草取りだから、みんな精を出してがんばってくれ。一生懸命やれば、ごちそうを出してやるぞ」
 しかし、使用人たちは、
「ごちそうと言っても、どうせ、小さなめざしが一匹付く程度だよ」
と、あまり真面目に働かず、言いつけられた草取りを半分ほどで止めてしまったのです。

 その日の夕方、草取りを終えた使用人たちが帰ってくると、天狗さまはニヤニヤと笑いながら言いました。
「今日は暑いのに、ご苦労さんだったね。言いつけ通り、精を出してがんばってくれたかな?」
 すると、使用人の一人が、
「はい、旦那さま。
 みんな、精を出してがんばりました。
 ・・・それで、朝のお約束のごちそうは、いつ出してもらえるのですか?」
と、尋ねると、天狗さまはすました顔で、
「おや? お前たちにはもう、ごちそうを出したはずだが」
と、言うのです。
「???」
 そこで使用人たちは天狗さまが行ってしまうと、ぶつぶつと文句を言いました。
「何を、言ってやがる! いつ、ごちそうを出してくれたんだ?!」
「確かに、おれたちは真面目に仕事をしなかった。しかし、うそをつく天狗さまも、ひどい人だ!」

 次の日も使用人たちは、のんびりと田の草取りを始めました。
 そして夕方になり、ようやく言いつけられた仕事が終わった頃、使用人の一人が大声で言いました。
「おーい、こんな所に、上等なごちそうが用意してあるぞ」
 その声にみんなが集まると、確かに今まで見た事もないほど上等な料理と上等な酒が、人数分並んでいるのです。
 でも残念な事に、用意されたのが昨日だったので、ごちそうはすでにくさっていました。
「ああ、もったいない事だ。昨日、天狗さまの言いつけ通りに働いていたら、このごちそうにありつけたのに」
「そうだな。これからは、真面目に働こう」

 こうして使用人たちは、次の日からまじめに働くようになったのです。 

おしまい

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