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2011年 12月19日の新作昔話

ほら吹き男爵 体の部品を売りますほら吹き男爵 体の部品を売ります

ほら吹き男爵 体の部品を売ります
ビュルガーの童話

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、月世界での冒険話を聞かせてやろう。

 ある朝、わがはいたちは、月世界の都へ土産物を買いに出かけた。
 にぎやかな大通りまで来ると、一人の商人が、
「だんな、だんな」
と、声をかけてきた。
「だんな、すばらしい心臓の掘り出し物がありますよ」
「そんな物は、いらないよ」
 わがはいが、断ると、
「そうおっしゃらずに。お取りかえの費用は、サービスしますよ」
と、しつこく言ってくる。
「もし買いかえるお金がなかったら、修理はいかがで」
「うるさいな」
 わがはいが、その商人をふりきって歩き出すと、今度は違う商人が、
「だんな、目はいかがですか?」
と、寄ってきた。
「金、銀、ピンク、青、黄、茶、黒と、一週間毎日かえられるように、セットになっています」
「いらないね」
「それなら、お好みの色を、ばら売りにしてもいいですよ」
 そのうちに、耳を売るやつ、歯を売るやつ、口を売るやつ、鼻を売るやつなど、次から次へとやって来て、
「だんな、何か買ってくださいよ」
と、しつこい事。
「買わんと言ったら、ぜったいに買わん!」
 わがはいはとうとう、腹を立てて怒鳴りつけた。
「この月世界ではどうかしらんが、われわれ地球人は、せっかく神さまがお与えくださった体の部分を、かってに取り替えたりするような馬鹿な真似はせん!」
 これには商人たちも、一瞬、ぽかんとしたが、やがて仲間同士でひそひそ話を始めた。
 まあ、向こうではひそひそ話でも、なにしろ十メートルもある大男ぞろいだから、声も大きくてわがはいには筒抜けだ。
 そして、そのひそひそ話の内容が、
「ふーん、どうりでちっぽけだと思ったら、こいつら地球人か」
「地球人といえば頭もいいし、体も優秀に出来ているそうだ。このまま、帰すのはもったいないな」
「そうだ。捕まえて、バラバラにして売ろう。いい金になるぞ」
と、おそろしく、ぶっそうなひそひそ話だった。
 こんな連中に、捕まっては大変だ。
「それ、逃げろ!」
 わがはいたちは商人たちを突き飛ばして、港へ向かってかけだした。
「待て、地球人!」
「逃がしてたまるか!」
 商人たちが追いかけて来たが、わがはいたちは何とか自分たちの船に乗り込んだ。
 しかし、月世界に来る時はよかったものの、地球に帰る方法までは考えていなかった。
「どうすれば、よいのだ? ここには、地球まで吹き飛ばしてくれるような暴風はないし」
 その間にも商人たちは、どんどん近づいてくる。
 商人たちは数も多い上に、体も大きいのだ、とても勝てる相手ではない。
「ああ、もう駄目だ。わがはいの冒険も、ここで終りか」
 わがはいたちが覚悟を決めたとたんに、王さまの家来たちが大根の武器を振りかざしながらかけつけて、商人たちを追っ払ってくれたのだ。
「王さま、ありがとうございます。おかげで助かりました」
 わがはいたちは命を助けてもらったお礼にと、王さまに船をプレゼントした。
 まあ、帰る事の出来ない船を持っていても、仕方がないからな。
 えっ? それではどうやって、地球に帰ったかって?
 それはだな、あくる日の夕立ちの去ったあと、天からかかった見事なにじの架け橋が、月と地球をつないでくれたので、われわれはにじをすべり台代わりにして、ゆうゆうと地球に帰る事が出来たのだ。
 以上が、わがはいの月世界の冒険話だ。

 それにしても、思い出すのも恐ろしいが、もしあの商人たちにつかまっていたら、今頃わがはいたちはバラバラに・・・・。
 今日の教訓は『悪いやつにからまれたら、すぐに逃げろ』だ。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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