2012年 9月10日の新作昔話
まぼろしの巨大魚「ブコ」
京都府の民話
「ぶおおおおおおおー」
むかしむかし、丹後の村の漁師たちが舟を出してアミをうっていると、海の中から不気味な声が聞こえてきました。
そしてそれと同時に、アミがすごい力で海の中に引っ張られ始めたのです。
「アミが破れるぞ! 早く引き上げるんじゃ!」
漁師たちは、必死にアミを引き上げました。
やがて海面に姿を現したのは、クジラほどの大きさの巨大魚です。
あまりにも大きすぎて、舟の上にはとても引き上げる事が出来ず、漁師たちはアミが破れないように気をつけながら、そのまま浜まで引いていきました。
巨大魚がひと暴れでもすれば、舟はたちまち沈んでいたでしょうが、巨大魚はおとなしいままでした。
「しかし、これは何という魚じゃろう?」
海で働く漁師たちにも、これが何の魚かわかりません。
そこで漁師たちは大魚の絵を紙に描くと、それを持って京の都の学者をたずねました。
すると学者はすぐに、
「ああ、この大魚はブコでしょう。千年に一度か二度しか姿を見せないという、とてもめでたい魚ですよ。むかし、中国の海にこの大魚が現れた時、田畑の作物はよく実り、この魚の肉を食べた者は病気にかからなかったといいます。ブコは平和で人々が安心してくらしているとき、深い深い海の底から現れる幸せの魚です。めでたい魚がとれて、何よりですね」
と、いったそうです。
おしまい