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2012年 9月24日の新作昔話

杭に化けたイタズラダヌキ

杭に化けたイタズラダヌキ
愛知県の民話

 むかしむかし、ある船着き場にはたくさんの渡し船が並んでいて、お花見の時期になるとたくさんの花見客がやって来るので、一日中にぎわっていました。
 ところが、その船着き場の近くに、一匹のイタズラダヌキが住んでいたのです。
 イタズラダヌキは、こっそり船着き場にやってくると、
(さて、今日はどの舟にするかな)
と、渡し船が近づくと、さっと川に飛び込み、船をつなぐ杭に化けたのです。
 そして、そうとは知らない船頭さんが、その杭に渡し船をつないで、お客たちと出て行ったその隙に、杭に化けたタヌキは元の姿に戻って、流されていく渡し船を楽しそうに見物するのです。
「あはははは。あの船頭、青い顔で渡し船を追いかけていくぞ。ご苦労さま」
 こんな事が何度もあったので、やがて渡し船の数は少なくなり、にぎやかだった船着き場も、だんだんとさびれていきました。
 そこで困った船頭たちは相談をして、イタズラダヌキをやっつけることにしたのです。

 ある月夜の晩、三人の船頭が渡し船の中になわや棒を隠して、ゆっくりとこいでいきました。
 そして船着き場に着くと、一人の船頭がわざと大きな声で言いました。
「弱ったな。舟をつなぎたいが、ちょうどいい杭がないぞ!」
 するとそれを聞いたタヌキは、急いで川に飛び込むと立派な杭に化けました。
 突然、目の前に現れた杭を見て、船頭さんたちはお互いに目で合図をすると、
「おお、こんな所に、こんな立派な杭があったとは知らなかった。では、この杭に舟をつなごう」
と、言いながら、三人は持っていた縄で杭をぐるぐる巻きにして、隠し持った棒でその杭をドンドン叩いたのです。
「このイタズラダヌキめ! そう何度も何度も、人間さまをだませると思っているのか!」
 しばられたタヌキはタヌキの正体を現すと、泣きながら船頭たちにあやまりました。
「ごめんなさい! もう杭に化けたりしませーん! だから許してくださーい!」
 そこで船頭たちは殴るのをやめると、タヌキに言いました。
「お前がイタズラをするおかげで、花見の客がうんと少なくなってしまった。もし、お前が花見客を呼び戻してくれたら、助けてやってもいいぞ」
「わかりました。では花見の間は立派な桜に化けて、大勢の花見客を呼んで見せます」
 こうしてイタズラダヌキは、毎年花見の時期になると、とても立派な桜の木に化けてくれたのです。
 おかげでそれからどんどん花見客が来るようになり、この船着き場は以前よりもにぎやかになったという事です。

 まあ、時々、花見客のお弁当を食べてしまうこともありましたがね。

おしまい

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