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2012年 12月3日の新作昔話

火の鳥

火の鳥
ロシアの昔話ロシアの情報

 むかしむかし、ある王さまには、三人の王子がいました。
 上の王子は、ドミートリー。
 中の王子は、ワシーリー。
 下の王子は、イワンと言う名前です。

 王さまは、お城の庭に金の実がなるリンゴの木を一本持っていますが、ある日から、このリンゴの実を毎晩盗みに来る者がいるのです。
 王さまはカンカンに怒って、上の王子から順々に、リンゴの木の見張りをさせる事にしました。
「王子たちよ。必ずリンゴ泥棒を捕まえてくれ」
「はい。わかりました」
 王子たちは張り切って、リンゴの木の見張りにつきました。
 けれど、上の二人の王子はなまけ者だったので、真夜中になるとグーグーと寝てしまいました。
 それで二人とも、金のリンゴを盗まれてしまいました。
 最後は、末っ子のイワン王子の番です。
 イワンは兄たちと違って真面目だったので、真夜中になっても眠りません。
 頑張って見張っていると、まだ朝になっていないのに、急にあたりが明るくなりました。
(わあ、なんだろう?)
 イワンがまぶしさに目を細めていると、なんと金色の羽を広げた一羽の火の鳥が飛んで来て、金のリンゴの実を食べているのです。
「あれが、リンゴ泥棒だな!」
 イワンは急いで火の鳥に飛びつきましたが、火の鳥の羽を一枚つかんだだけで、逃げられてしまいました。
 翌朝、イワンから事情を聞いた王さまは、その火の鳥の美しい羽を見て、火の鳥が欲しくてたまらなくなりました。
 そこ、で三人の王子たちに言いました。
「火の鳥を捕まえてきた王子には、この国の半分を与えよう。そしてわしが死んだ後は、この国の跡継ぎにしてやろう」
 三人の王子たちは、さっそく馬に乗って火の鳥を捕まえる旅に出ました。
 しかし上の二人の王子は、途中でめんどうになり、どこかへ遊びに行ってしまいました。
 そこでイワン王子だけが旅を続けていると、森の中で突然、灰色のオオカミが飛び出して来ました。
 オオカミは、
「腹ぺなんだ。悪いがお前の馬を、食べさせてもらうぞ」
と、言って、王子の馬をペロリと平らげてしまいました。
 そこで王子が、
「火の鳥を探すのに、馬がいなくては困る」
と、文句を言うと、オオカミは、
「それはすまなかった。でも、火の鳥のいる場所なら知っているぞ。わたしが連れて行ってやろう」
と、言って、王子を背中に乗せて走り出しました。

 しばらくして大きなお城の前につくと、オオカミは王子にこう言いました。
「この城の庭に、金のカゴに入った火の鳥がいる。けれど、火の鳥が欲しいのなら火の鳥だけを取り出すんだ。金のカゴは、決してさわってはいけないよ」
 ところがイワン王子は、きれいな金のカゴを目の前にすると、ついさわってしまったのです。
 するとたちまちカゴについていた鈴が鳴り出したので、王子はお城の家来たちに捕まってしまい、王さまの前へ引き出されました。
 王子が一生懸命に許しを請うと、王さまは、
「よし。お前が隣のアフロン王の国から、金のたてがみの馬を盗んできたら許してやろう」
と、言って、王子をお城の外に放り出しました。
 外で王子を待っていた灰色のオオカミは、あきれた顔で言いました。
「だから言ったのに、仕方のない王子さまだ。でも、もう一度だけ助けてやろう」
 オオカミは王子を背中に乗せると、アフロン王の馬屋に連れて行ってくれました。
 オオカミは王子に、
「金のたてがみの馬以外は、決してさわらないように」
と、注意しましたが、王子はそばに置いてあった金のくつわも欲しくなって、また手をふれてしまいました。
 すると、くつわについていた鈴が鳴り出して、王子はアフロン王に捕まってしまいました。
 王子が一生懸命に許しを請うと、王さまは、
「それでは、果ての国の美しいエレーナ姫をさらってこい。姫を連れてきたら許してやろう」
と、言って、王子をお城の外に放り出しました。
 外で王子を待っていた灰色のオオカミは、あきれた顔で言いました。
「やれやれ、本当に困った王子さまだな。仕方ないから、今度はわたしが行ってやろう」
 王子にそう言うと、オオカミは風の様に走って、エレーナ姫を連れてきました。
 ところが王子と姫は、一目見つめ合ったとたんに、お互いを好きになってしまったのです。
「わたし、あなたのお嫁さんになりたいわ」
 エレーナ姫の言葉に、王子は大喜びでが、けれど姫を連れて行かないと、王子は死刑になってしまいます。
 王子が困った顔でオオカミを見つめると、オオカミはため息をつきながら言いました。
「やれやれ、馬を食べたばかりに、こうも次から次へと働かされるとは思わなかった。けれど、ここまで来たからには、最後まで助けてやるよ」
 オオカミは魔法を使ってエレーナ姫に化けると、アフロン王から金のたてがみの馬を手に入れて、それと交換に火の鳥を手に入れました。
 そして王子はエレーナ姫と一緒に国へ帰り、王さまから国をゆずられて姫と結婚したのです。

おしまい

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