2012年 12月24日の新作昔話
二人の女中
ロシアの昔話(クルイロフ童話) → ロシアの説明
むかしむかし、とても人使いの荒い奥さんの家に、二人の女中がいました。
この女中たちの仕事は、糸をつむぐ事です。
女中たちには休みが無く、毎日、まだ暗いうちから働かされていました。
時々、奥さんが寝過ごす事があったのですが、あいにく、この家には早起きのオンドリがいて、
「コケコッコウー!」
と、目覚ましのように奥さんを起こしてしまうので、奥さんは寝過ごしていてもすぐに飛び起きて来て、
「さあ、働くんだよ」
と、ねむっている女中たちを、棒でたたき起こすのです。
おかげで女中たちは、いつも疲れ果てていました。
「ああ、一度でいいから、ゆっくりねむりたいわ」
「本当にねえ。でも、あのオンドリがいる限り無理よ」
「そうね。あのオンドリさえいなかったら、わたしたちはもっとゆっくりねむれるんだわ」
「・・・そうよ、あのオンドリさえいなければ」
そしてある夜、二人は奥さんのすきを見て、ネコに襲われた見せかけて、オンドリを殺してしまったのです。
「さあ、これで明日からゆっくり眠れるわ」
二人はそう思ったのですが、でも、目覚まし代わりのオンドリがいなくなった奥さんは、
「寝坊しては大変よ」
と、時間ばかり気にしはじめ、オンドリでさえ鳴かなかった早い時間から女中たちをたたき起こして、仕事を始めさせたのです。
これと同じように、人は嫌な事やつらい事から逃げようとするのですが、その方法を間違えると、かえってひどい目にあうのです。
おしまい