2013年 2月25日の新作昔話
縁起かつぎ
むかしむかし、何かにつけて縁起をかつぐ旦那さんがいました。
ある日の事、畑に麻をまこうと考えた旦那さんは、まず暦を見て吉日が何日後かを確認し、その吉日になるのを待ってから畑に麻をまこうとしたのですが、そこへ座頭さんが通りかかって尋ねました。
「私は『えだお』から来たのだが、『ふしお』はどちらかね?」
「えだお、ふしお?」」
麻は糸にするものなので、枝や節があっては困ります。
「枝だの節だの不吉な事を言われては、育つものも育たない。今日はやめだ」
縁起かつぎの旦那さんは、畑に麻をまくのをやめてしまいました。
それからしばらくした、次の吉日。
旦那さんが畑に大豆をまこうとしていると、あの時の座頭さんが長い刀を持って通りかかりました。
一緒に畑仕事をしていた使用人が、座頭に言いました。
「おや、座頭さん。長い物をお持ちですね」
「はい。わたしは背が低く、長いのはサヤばかりです」
それを聞いた旦那は、
「サヤばかりだと? せっかくの大豆が、サヤばかりの大豆になったら大変だ。今日はやめだ」
と、大豆をまくのをやめてしまいました。
さて、それからまたしばらくした次の吉日。
縁起かつぎの旦那さん、今度は大根の種をまこうとしました。
でも、いつもいつも座頭さんが通りがかって不吉な事を言うので、使用人に言いました。
「いいか、座頭が来ても絶対に口をきくんじゃないぞ」
そこへ、いつもの座頭さんがやって来て言いました。
「みなさん、ご精が出ますのう」
「・・・・・・」
使用人は旦那の言いつけを守って、返事をしませんでした。
(ははーん。これは、縁起かつぎの旦那が何かを言ったな)
そう思った座頭さんは、にやりと笑って言いました。
「私が根も葉もない事を言ったせいで、みなさんにご迷惑をかけましたかな?」
それを聞いた旦那は、頭をかきむしりながら言いました。
「大根に根も葉もなくなったら、どこを食べればいいのだ。・・・もう、やめだ!」
旦那はウンザリして、その年の畑仕事をやめてしまいました。
もしかすると座頭さん、わざと意地悪をやっていたのかもしれませんね。
おしまい
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