和尚と小僧のわらい話
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2013年 4月22日の新作昔話

鬼がふらせる大雪

鬼がふらせる大雪
福井県の民話

 むかしむかし、福井県の木の芽峠(きのめとうげ)というところに、人食い鬼が出るとのうわさが立ちました。

 そんなある日、富山県の新保村というところから薬売りがやってきました。
 人食い鬼のうわさでどの薬売りも木の芽峠へ近づかないので、よい商売が出来ると思ったのです。
(さて、この辺りだな、人食い鬼が出るのは)
 薬売りが用心深く歩いていると、ふいに背後から現れた人食い鬼が、大きな手で薬売りをひょいとつまみ上げました。
「まずそうな人間だが、しかし腹ペコでいるよりはましだ」
 人食い鬼がそう言って、今にも薬売りを食べようとした時です。
 薬売りがとっさに、大声で叫びました。
「わしの体には、毒が流れているぞ!」
「何、毒だと・・・。しかし毒など、鬼のわしにはきかぬは」
「ならば食べてみるがいい。わしの毒は、熊も殺す猛毒じゃ!」
「ぬ、ぬぬぬ・・・」
 そこで人食い鬼は仕方なく、薬売りに言いました。
「では、食うのを許してやる。その代わり、日本一強くなる薬をよこせ」
「分かった、日本一強くなる塗り薬を塗ってやろう」
 薬売りは背中の荷から唐辛子の粉を出して水に溶くと、鬼の背中にペタペタと塗りつけました。
「ウギャーーー!」
 唐辛子が毛穴からしみこんでいき、人食い鬼は思わず悲鳴を上げました。
「がまんせい! 良薬は口に苦しと言うであろう」
「しかしこれは、まるで背中が火事になったようだ。頼むから、助けてくれ〜」
「仕方ない、痛み止めを塗ってやろう」
 そう言うなり、薬屋はからしの粉を取り出すと、まっ赤になった人食い鬼の背中に塗りつけたのです。
「ヒョゲーーー!」
 人食い鬼は哀れな悲鳴をあげながら山に登ると、雲にのって空の上へと逃げていきました。

「うむ、人食い鬼を退治してやったわ」
 薬売りは意気揚々と、峠を下っていきました。

 それから毎年冬になると、薬売りの住んでいる新保村に大雪が降るようになりました。
 あの時の人食い鬼が、仕返しに大雪を降らせているということです。

おしまい

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