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2月23日の世界の昔話

かしこいグレーテル

かしこいグレーテル
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 むかしむかし、あるお屋敷の主人が、お手伝いのグレーテルに言いました。
「今日の晩ごはんは友だちといっしょに食べるから、ニワトリの丸焼きを作っておくれ」
 それでグレーテルは、夕方になるとニワトリを焼き始めました。
「だんなさま。お友だちは来ましたか? もうすぐニワトリの丸焼きができますよ」
「いや、まだ来ないんだ、どうしたのかな?」
 やがて、ニワトリの丸焼きが出来ました。
「だんなさま。お友だちは来ましたか?」
「それがまだなんだ。すぐよんでくるから、丸焼きを皿にのせておいてくれ」
 主人が外へ飛び出すと、グレーテルは丸焼きが上手に出来たかどうか確かめるために、一口パクリと食べてみました。
「うん、おいしくできたわ」
 ニッコリ笑って、グレーテルは丸焼きを皿にのせました。
 でも、主人は帰ってきません。
「丸焼きは、あたたかい方がおいしいのに」
 そう言って、グレーテルはまた丸焼きをパクリ。
 それでも、主人は戻ってきません。
 だから、もう一口パクリ。
 そのあとも、
「まだかしら」
 パクリ。
「おそいわねえ」
 パクリ。
「冷めちゃうのに」
 パクリ。
 とうとう、ニワトリの丸焼きを全部食べてしまいました。
 そこへ主人が帰ってきて、
「友だちはもうすぐ来るらしい。わたしは今のうちに、食事の時に使うナイフをよく切れるようにしておくよ」
と、ナイフをとぎ始めました。
 さあたいへん。
 自分がニワトリの丸焼きを食べてしまったことを主人に知れたら、グレーテルは怒られてしまいます。
 どうするか、なやんでいるとき、ついに主人の友だちが来ました。
「あっ、そうだわ」
 わるぢえをひらめいたグレーテルは、急いで玄関(げんかん)に行くと、主人の友だちにこっそり言いました。
「あなたがなかなか来ないので、だんなさまはカンカンに怒っています。どうやら、あなたの耳を切ってしまうつもりらしいですよ」
 友だちはビックリして、あわてて逃げました。
 その足音を聞いて、主人はナイフを持ったまま。
「おーい、どうしてうちでごはんを食べないんだよう」
と、追いかけました。
 そのまま二人は一晩中、町を走り回っていました。
 おかげでグレーテルは、ニワトリの丸焼きを食べたことを主人に知られなくてすみました。

おしまい

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