8月1日の世界の昔話
ピノッキオ
コッローディの童話
むかしむかし、子どもの好きな時計職人のゼペットじいさんは、ある日、子どものかわりに木のあやつり人形をつくりました。
人形の名前は、ピノッキオです。
目がクリクリと大きくて、鼻はツンとのび、なかなかにかわいい男の子です。
ピノッキオが完成した夜、ゼペットじいさんは星に願いをかけました。
「どうか、このピノッキオが、本当の子どもになりますように」
さて、ま夜中のこと、ゼペットじいさんの家のまどから、一匹のコオロギが入ってきました。
そしてピノッキオを見つけると、礼儀正しくあいさつをしました。
「やあ、かわいい坊や。わたしはの名はジミニー・クリケット。どうか、ジミーとよんでください」
さあ、そのときです。
突然、夜空の星がキラリとまぶしくかがやくと、スーッと星の光に乗って、星の女神がピノッキオとジミーの前にやって来たではありませんか。
「あっ、星の女神さま」
おどろくジミーに星の女神はやさしくほほえむと、美しい声でピノッキオに言いました。
「やさしいゼペットじいさんの願いは、星に届きました。ピノッキオ、あなたに声と自由をあたえましょう。そして、本当に良い子どもになったなら、ゼペットじいさんの願いどおり、人間の子どもにしてあげましょう」
そして女神は、魔法の杖(つえ)をクルリとふりました。
すると木で出来た人形のピノッキオが、なんと二本の足で立ちあがったのです。
「あらら。木の人形が動き出したぞ。こりゃ、すごい!」
ビックリするジミーに、星の女神はやさしく言いました。
「ジミニー・クリケット。もしよろしければ、ピノッキオが良い子になれる手伝いをしていただけませんか?」
「えっ! わたしの名をご存じで! さすがは星の女神さま。かしこまりました。このジミー、ピノッキオが良い子になり、必ず人間になれるよう、頑張らせていただきます!」
「うふふふ。ありがとう」
星の女神はほほえむと、星の光に乗って帰って行きました。
さて、朝になり、目をこすりながら起き出したゼペットじいさんに、ピノッキオが元気よくあいさつをしました。
「おはよう、お父さん!」
「ああ、おはよう。ピノッキオ、もう起きていたのか。・・・ええっ!!」
ピノッキオが動いて声を出していることにおどろいたゼペットじいさんは、思わずほっぺたをつねりました。
「なんじゃ。ピノッキオが動いておる! ピノッキオがしゃべっておる! ・・・わしは、まだ夢をみとるのか?」
「お父さん、夢じゃないよ。星の女神がお父さんの願いをかなえてくれたんだ。それに、良い子どもになったら、人間にしてくれるって」
「おおっ、ピノッキオ! 女神さま、ありがとうございます!」
ゼペットじいさんはピノッキオをだきしめ、それから大喜びで、ピノッキオが学校へ行けるように準備をしてくれました。
「では、お父さん。行ってきまーす」
ピノッキオとジミーが学校への道を歩いていると、前からキツネとネコがやって来ました。
このキツネとネコは、人をだましてお金もうけをする悪いやつらです。
キツネはピノッキオを一目見て、金もうけになると考えました。
そしてネコと一緒にピノッキオの前に立ちふさがると、ピノッキオに言いました。
「かわいい坊や、今からどこへ行くんだい?」
「学校だよ」
「学校か。えらいねえ。でも、君は見世物小屋に行くべきだ」
「見世物小屋?」
「そうさ、君ならきっと、見世物小屋のスターになれるよ」
「えっ、スターに?」
「スターもスター、君は大スターさ」
「大スターか、学校よりも楽しそうだね」
ピノッキオは、キツネとネコについて行きました。
「だめだよピノッキオ! 学校へ行かないと、良い子どもになれないよー!」
ジミーも、あわてて後を追いました。
さて、見世物小屋の親方(おやかた)は、ピノッキオを見ると大喜びで、キツネとネコにお金をわたしました。
「さあさあ、世にもめずらしい、自分でうごく人形だよ」
ピノッキオが舞台(ぶたい)に出ておどると、お客さんはしばらくビックリして、その後はわれんばかりの大拍手(だいはくしゅ)です。
「わあー、ぼくはスターだ」
ピノッキオはうれしくなって、むちゅうでおどりました。
でも舞台が終わると、ピノッキオは家に帰してもらえず、鳥カゴへ閉じこめられてしまいました。
「あーん、どうしよう。家へ帰りたいよー。お父さんに会いたいよー」
閉じこめられたピノッキオが泣いていると、夜空からスーッと光がさし込み、星の女神が現れました。
「あらピノッキオ、どうしてここにいるの? 学校へは、行かなかったの?」
「どうしてって・・・」
ピノッキオは、本当の事を言ったら、人間の子どもにしてもらえなくなると思い、うそをつくことにしました。
「実は、学校へ行く途中、いきなり見世物小屋の親方につかまったんです」
そのとたん、ピノッキオの木の鼻が、ズンとのびていきました。
「あれあれ、どうして? 鼻がのびていくよ」
あわてるピノッキオに、星の女神は言いました。
「ピノッキオ。いま、うそをつきましたね。あなたの鼻はうそをつくと、ドンドンのびていくのですよ」
「うそじゃないよ。本当だよ!」
ピノッキオがそういうと、ズンズンと、またまた鼻がのびてしまいました。
星の女神は、きびしい顔で言いました。
「いいですか。うそというものは、一つつくと、新しいうそを重ねてつかなくてはならなくなります。ピノッキオ、あなたは本物の人間の子どもに、なりたくないのですか?」
「なりたいよ! 本物の人間の子どもになりたいよ! 女神さま、うそをいってごめんなさい!」
ピノッキオが泣きながらさけぶと、星の女神は魔法の杖をクルリとふって、のびた鼻を元通りにしてくれました。
そして、ピノッキオが閉じこめられている鳥カゴのカギを開けてやると、
「助けてあげるのは、今度だけですよ、ピノッキオ。がんばって、きっと本物の良い子になるのですよ。それではジミー、ピノッキオを家までお願いね」
星の女神はそう言うと、星へと帰って行きました。
ジミーはピノッキオをつれて、ゼペットじいさんの家へ帰りました。
それからピノッキオは、女神さまとの約束を守って、良い子で楽しくすごしました。
ゼペットじいさんは、とてもピノッキオをかわいがり、ピノッキオもゼペットじいさんの事が大好きでした。
けれど、ある日のこと。
学校へ行く途中の道で、ピノッキオとジミーは、またあのキツネとネコに見つかってしまったのです。
「ピノッキオ、あいつらは悪いやつだ。はやく逃げよう」
「うん」
ジミーの言葉にうなづいたピノッキオは、すぐにその場を逃げ出したのですが、キツネとネコは先回りしてピノッキオをとおせんぼうすると、
「たいへんだ! ピノッキオ。君は病気なんだよ」
「ええっ、ぼくが病気?」
「そうさ。このままじゃあ、死んでしまうだろう。ああ、きみが死んだら、お父さんは悲しむだろう」
「そんなー」
「こうなれば、助かる方法は一つしかない」
「どうするの?」
「それはだね。はやく楽しいところへ行って、思いっきり遊ぶんだ。そうすれば病気がなおり、元気になるんだよ」
それを聞いたジミーが言いました。
「ピノッキオ、だまされるんじゃない! 遊んで病気がなおるなんて、うそに決まっている!」
「おっと、お前はあっちに行ってな」
ネコはジミーをつまみ上げると、ピューンと、遠くへ投げ飛ばしました。
そしてピノッキオの手を引っ張ると、
「さあ坊主、兄貴の言葉を聞いただろう。はやく元気になって、お父さんを喜ばせてやろうぜ」
と、いって、ピノッキオを港(みなと)へつれて行きました。
港には大きな船がとまっていて、たくさんの子どもたちが乗り込んでいます。
「あの、どこへ行くの?」
ピノッキオがたずねると、一人の男の子がこたえました。
「島の遊園地(ゆうえんち)さ。そこは子どもの天国なんだ。思いきり遊ぼう」
ボーッ。
船が汽笛(きてき)をならして、海をすべり出しました。
ジミーは船の甲板(かんぱん)にピノッキオの姿があるのを見ると、急いで木の板につかまって、船をおいかけました。
「待っていろよ、ピノッキオ。必ず助けてやるからな!」
船はやがて、島の遊園地につきました。
「わーい、着いた、着いた」
子どもたちは先をあらそって、船をおりました。
観覧車に、ジェットコースターに、メリーゴーランドに、ゲームに、ダンスホールと、ここには何でもあります。
どの乗り物もただで乗り放題、おまけにジュースやポップコーン、アイスクリーム、キャンディなんかのお菓子も、食べ放題なのです。
「あははははっ、楽しいなー!」
ピノッキオもいつのまにか、星の女神との約束やジミーのこと、そして、大好きなお父さんのこともわすれて遊んでいました。
でもそうしているうちに、ピノッキオは、まわりの子供たちが次々とロバになっていくことに気がついたのです。
いいえ、まわりの子どもたちばかりではありません、ピノッキオの耳もロバの耳になり、おしりからは、しっぽがはえてきたのです。
「どうしよう!」
ピノッキオがさけんだとき、追いかけてきたジミーがようやくたどりつきました。
「ピノッキオ! すぐ海に飛びこんで逃げるんだ! ここは悪い大人たちが、ロバになった子どもたちを売りとばすところなんだ。君は一生、ロバのまま働きたいかい」
「そんなのいやだ!」
ピノッキオは海に飛び込むと、ジミーといっしょに板につかまって、やっとのことで港に帰りました。
「いいかい、ピノッキオ。わたしも一緒にゼペットさんにあやまってあげるから、ちゃんと、『ごめんなさい』って、言うんだよ」
「うん。ありがとう、ジミー」
さて、ようやくピノッキオとジミーが家に帰ってきたのですが、家の中にはゼペットじいさんがいません。
かわりに、ドアに張り紙がしてありました。
《大切なピノッキオがもどらないので、探しに行きます》
ピノッキオとジミーは家で待ち続けましたが、いつまで待っても、ゼペットじいさんはもどって来ませんでした。
そしてピノッキオとジミーは、悪い知らせを耳にしたのです。
それはゼペットじいさんが、海で大クジラに飲まれてしまったというのです。
「大変だ! お父さんを助けなきゃ!」
さっそく二人は海へ行き、そして大クジラをさがしました。
しかし二人が大クジラを見つけたとき、大クジラは大きな口を開けて、魚と一緒に、ピノッキオとジミーを飲み込んでしまったのです。
大クジラに飲み込まれた二人は、大クジラの口からおなかの中へと泳いで行きました。
すると、大クジラのおなかの中で、ゼペットじいさんがションボリと小舟に乗っていたのです。
「お父さん!」
「おおっ、ピノッキオ! 夢じゃないだろうな、ああ、こっちへおいで。よしよし、お前さえいてくれれば、クジラの中だろうとかまいはしないよ」
ゼペットじいさんはピノッキオをしっかりだきしめて、何度もキスをしました。
「ぼくも会えてうれしいよ。でも、クジラの中でもいいだなんてだめだよ。お父さん、家に帰ろう」
「だが、どうやって?」
ピノッキオは、ゼペットじいさんに言いました。
「舟の中の物を燃やして、煙(けむり)で大クジラのおなかの中をいっぱいにするんだよ! そうすれば、大クジラも苦しくなって、口を開けるに決まっているよ」
「そうか、その手があったか」
さっそくゼペットじいさんとピノッキオは、イスやテーブルに次々とランプの火をつけました。
するとたちまち、大クジラのおなかは煙でいっぱいになりました。
やがて煙で苦しくなったのか、大クジラは大きな口を開けると、
「ハァックショーーーン!」
と、大きなクシャミをしたのです。
そのとたん、おなかの中の舟は波と一緒に、ものすごいいきおいで大クジラの口から海へと押し流されました。
「やったー!」
けれど、怒った大クジラが、追いかけてくるではありませんか。
ドッカーーン!
大クジラの体当たりに、舟はたちまちこわされてしまいました。
そして舟をこわした大クジラは、ふたたびピノッキオたちに襲いかかってきました。
「お父さん! ジミー! はやく浮いている物につかまって!」
「しかしピノッキオ、お前は」
「ぼくなら大丈夫。木で出来ているから水には沈まないよ」
ゼペットじいさんとジミーは、こわれた舟の板きれや空きビンにつかまって、なんとか岸までたどりつきました。
ところが、ピノッキオの姿がありません。
「おーい、ピノッキオ! どこにいるんだー!」
ゼペットじいさんとジミーがあたりをさがしていると、手も足もこわれて、バラバラのボロボロになったピノッキオが見つかりました。
ピノッキオはゼペットじいさんたちを助けるために、自分がおとりになったのです。
ゼペットじいさんはバラバラになったピノッキオをつれて帰ると、ベッドに寝かせてオイオイと泣きました。
「ごめんよ、ピノッキオ。大切なお前を死なせてしまって」
その横でジミーも、オイオイと泣きました。
「ごめんな、ピノッキオ。きみを人間にしてみせると、約束したのに」
その夜おそく、夜空がキラリと輝くと、星の女神が光に乗ってあらわれました。
そして、ベッドに横たわるピノッキオに言いました。
「ピノッキオ。あなたはお父さんを助けるために、勇気(ゆうき)をもってがんばりました。とても良い子でしたよ。約束どおり、あなたを人間の子どもにしてあげましょう」
星の女神が魔法の杖をクルリとふると、バラバラでボロボロだったピノッキオの体が見る見るうちになおっていきました。
木でできた体は、だんだんと人間の子どもの肌にかわっていきました。
やがて、目も耳も口も髪の毛も、全て人間の子どもになったピノッキオは、元気よくベッドを飛びおりました。
そして、泣きながら眠っているゼペットじいさんのところへかけて行くと、ゼペットじいさんに抱きついて言いました。
「お父さん、泣かないで! だってぼく、今日から本物の人間の子どもになったんだよ!」
「おお、ピノッキオー!」
ゼペットじいさんは、今度はうれしくて、またオイオイと泣きだしました。
さて、本物の人間になったピノッキオは、それからずっと、ゼペットじいさんやジミーと一緒に、いつまでも幸せにくらしたのです。
おしまい
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