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12月13日の世界の昔話

アルキメデスの肖像画 17世紀作
アルキメデスの肖像画

アルキメデスの最後

 むかしむかし、アルキメデスという名前の天才数学者がいました。
 彼の発見した法則や原理は、今の科学でも欠かすことの出来ない物となっています。
 このお話しは、その天才数学者、アルキメデスの最後のお話です。

 アルキメデスは新兵器や発明により、無敵のローマ軍をさんざんに苦しめたのですが、はじめにアルキメデスが考えたように、ローマ軍に負ける日をのばすことは出来たのですが、ローマ軍に勝つ事は出来ず、ついにシラクサの城はローマ軍によって陥落したのです。
 ローマ軍のマルケルス将軍は、
「アルキメデスを決して殺さずに連れて来い。彼は貴重な戦力だ。彼には我がローマ軍の軍事技術長になってもらう」
と、兵士たちに命令しました。
 しかしローマ兵がシラクサに侵入した頃には、みんな逃げてしまった後で、人っ子一人いませんでした。
「なんだつまらん。せっかくこの手でアルキメデスを捕まえて、褒美をもらおうとやろうと思ったのに」
 ローマ兵士たちは、がっかりです。
 しかし道を歩いていると、一人の老人が道に図形を書いているではありませんか。
 ローマ兵の一人が近寄っても、老人はその図形によっぽど夢中なのか、顔を上げようともしません。
 腹の立ったローマ兵が、その老人に言いました。
「おいぼれ、きさまはなぜ逃げない? こんなところで何をしている?」
 するとその老人は、あいかわらずその図形をながめながら答えました。
「いま、大発見をしているところだ。邪魔をするでない」
「なに、これのどこが大発見だ?」
 そういって兵士は、老人の書いた図形を踏みつけました。
 すると老人は、目の色を変えてローマ兵に怒鳴りました。
「馬鹿者! この大発見が世に広まれば、どれだけ多くの人を救えると思うのだ! お前など、この大発見の百万分の一の価値もないわ!」
 この老人こそ、アルキメデスだったのですが、その後彼は、怒ったローマ兵士に殺されてしまい、彼の最後の大発見は、そのまま消えてしまったのです。

 紀元前 212年の事で、アルキメデスは75歳でした。

おしまい

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