福娘童話集 小学生童話 4年生
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4年生の日本昔話

クラゲのおつかい

クラゲのおつかい

 むかしむかしの、遠いむかし。
 そのころ、深い海の底(そこ)には、竜宮(りゅうぐう)がありました。
 ある日、病気のおきさきが、急にサルのきもを食べたいといいだしたものですから、王さまをはじめ、家来のさかなたちは、すっかり困(こま)ってしまいました。
 海の底(そこ)では、とてもむりな話です。
 それでも知恵(ちえ)のあるカメが、いい考えを思いつきました。
 王さまやさかなたちも、そのすばらしい思いつきに賛成(さんせい)しました。
「では、この使いをクラゲに頼(たの)もう」
 選(えら)ばれたクラゲは、はりきって、海の底(そこ)からサルがたくさん住んでいる、サルが島へやってきました。
 ちょうど一匹(1ぴき)のサルが、波うちぎわで遊んでいました。
「よう、サルさん、こんにちは」
「おや、クラゲくん、いい天気だね」
「ねえ、サルさん。きみ、竜宮(りゅうぐう)へ遊びにこないかい。とってもいい所だよ」
「竜宮(りゅうぐう)! いくいく! ・・・でも、だめだよ。ぼくは泳げないんだもの」
「それならだいじょうぶさ。ぼくの背中(せなか)に乗せていってあげるよ」
「ほんとうかい、うれしいなあ」
 サルは、すぐにクラゲの背中(せなか)に飛(と)び乗(の)りました。
 クラゲは、スイスイ泳いで海の中へ。
「うわっ、海の中って、きれいだなあ」
 珍(めずら)しいけしきに、サルは、ただうっとり。
「さあ、サルさん、もうすぐ竜宮(りゅうぐう)だよ」
 そしてクラゲは、うっかりサルに聞いてしまいました。
「ねえ、きみ、きもを持ってる?」
「きも? どうして?」
「竜宮(りゅうぐう)のおきさきさまが、食ベたいんだって」
(そ、それでぼくを。こりゃ、たいへんだ!)
 サルはビックリ。
 きもを取られては、死んでしまいます。
 でも、頭のいいサルは、少しもあわてず、ざんねんそうにいいました。
「そりゃ、あいにくだな。きょうはお天気がいいから、木の上にほしてきたよ。クラゲくん、ご苦労(くろう)だけど、取りに帰ろうよ」
「そうかい。しかたがないや。じゃ、ひき返そう」
 そこでクラゲは、また、サルが島へ逆(ぎゃく)もどりです。
 島につくと、サルはあわてて飛(と)びおり、
「やーい、やーい、クラゲのおばかさん。きもは木の上なんかにありゃしないよ。ぼくのからだの中さ。アハハハハッ」
「ええっ! ほんとうかい」
 クラゲはくやしがりましたが、もうしかたがありません。
 トボトボと、竜宮(りゅうぐう)へ帰っていったクラゲは、
「この、まぬけクラゲめっ!」
「おまえなんか、消えてしまえ!」
 王さまやさかなたちに、メチャクチャにたたかれました。
 クラゲが今のように骨(ほね)なしになったのは、このためだそうです。

おしまい

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