福娘童話集 小学生童話 4年生
ふくむすめ童話集 > 小学生童話 > 4年生向け > 日本昔話 > 彦一(ひこいち)とえんまさま

4年生の日本昔話

彦一とえんまさま

彦一(ひこいち)とえんまさま

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 彦一(ひこいち)も、年をとっておじいさんになり、とうとう死んでしまいました。
 死んだ彦一(ひこいち)が、ふと気がつくと、目の前にはなんと、地獄(じごく)えんまさまがすわっています。
(しもうた。ここは、地獄(じごく)じゃ)
 だけど彦一(ひこいち)は、少しもあわてません。
 めいどヘ旅だつとき、彦一(ひこいち)は黒ざとうと、白ざとうと、トウガラシを入れた、三段(3だん)のじゅうばこをもたせてもらいました。
 そのふたをあけ、黒ざとうから、さもうまそうになめはじめました。
「こら、彦一(ひこいち)、しんみょうに、おれさまのさばきをうけい。・・・やや、そこで、なにをなめているか」
 えんまさまが、大目玉でにらみつけると、彦一(ひこいち)は、ニッコリ笑(わら)って、
「うまいものです。ちょっとだけ、さしあげましょう」
と、言うと、黒と白のさとうをだしました。
「なるほど、たしかにうまい。・・・うん? その下のだんには、なにが入っておる」
「それでは、これもなめてください」
 彦一(ひこいち)がまたさしだしたのは、ほかでもない、真っ赤なトウガラシです。
 えんまさまは、チョイとなめて、すぐにベッと、はきだしました。
 だけど、彦一(ひこいち)はなにくわぬ顔で、
「えんまさま、こりゃ、ひと口なめれば、からいもの。いちどにたベれば、うまいものです。いっペんにのみこまないといけません」
「そうか、では、はやくよこせ」
と、えんまさまは、じゅうばこいっぱいのトウガラシを、一口でのみこんだものですから、たまりません。
 たちまち、はらの中がにえくりかえり、口や目から火をふきました。
「あちち、あちち、もうたまらん!」
 えんまさまはドタドタところげまわったあげく、赤い衣(ころも)をぬぎすてて、水をかぶりにかけだしました。
 手下のオニどもも、これはたいへんと、右ヘ左へ走ってまわっています。
「では、わたしはこのすきに」
 彦一(ひこいち)は、えんまさまの赤い衣(ころも)に着替(きが)えると、外へとびだしました。
 そして、なにも知らない子オニたちに、こういいました。
「わたしはえんま大王であるぞ。ちと、天国まで用事があるので、すぐにカゴを用意しろ」
「はっ、ただいま!」
 子オニたちは、急いでカゴを用意すると、彦一(ひこいち)を天国まではこびました。
 こうして彦一(ひこいち)は、ぶじに天国で暮(く)らすことができました。

おしまい

ページをとじる