福娘童話集 小学生童話 4年生
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4年生の江戸小話(えどこばなし)

かげぐち

かげぐち

 料理屋(りょうりや)ではたらいている権助(ごんすけ)が、表(おもて)で、薪(まき)をわっておりました。
 そこに、同じ村から、いっしょに出かせぎに来ている男がやって来て、
「権助(ごんすけ)どん、どうだね、この店は。おいしい物を、食べさせてくれるかね?」
と、声をかけました。
「まあ、きいておくれよ。人使いはあらいし、その上、とんでもないけちな店なのさ。第一、こんなにお米の安い時なのに、朝も昼もおかゆで、晩(ばん)が雑炊(ぞうすい→野菜(やさい)などをきざみこんだおかゆ)だ。これが毎日続(つづ)くのだから、たまったもんじゃないよ。すぐに腹(はら)ペコになるので、たっぷり水でも飲んでおかないと、腹(はら)の皮が、背中(せなか)にくっついてしまいそうだ」
 権助(ごんすけ)が、ぶつぶつ文句(もんく)をいいながら、ふと、うしろを見ますと、お店のだんながこわい顔で立っておりました。
(しまった! こいつはまずいことを、言ってしまったぞ!)
 内心(ないしん)、ヒヤリとした権助(ごんすけ)は、あわてて、
「でもな、おなかをこわす心配がないので、この店の食事は最高(さいこう)にいいとおもうよ」

おしまい

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