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6年生の江戸小話(えどこばなし)
小男のねがい
生まれつき、背(せ)の小さい男がおりました。
神だなに手をあわせては、いつも、
「神さま、なにとぞ背が高(せがたか)くなりますように、ねがいします」
と、おいのりをしていました。
ある日のこと、夢の中に神さまがあらわれて、おごそかにいいました。
「おまえののぞみは、かなえてやる。ごはんを一升(1しょう→1.8ミリリットル)、おもちを一升(1しょう)食べ、酒をひとたる飲んで、そのままねむるがよい。目ざめたときは、体中がだるくかんじるから、そのとき、上下へ十分にのびをせよ。そうすれば、おまえの背(せ)は、かならずふとんの長さまでのびておるぞ」
そこで、パッと目がさめました。
「おお、ありがたいおつげだ。さっそく、そのとおりやってみよう」
男は、おつげのとおり、一升(1しょう)めしを食らい、一升(1しょう)もちを食い、ひとたる酒を飲むと、ぐでんぐでんによって、その場で、そのままねむってしまいました。
さて、目がさめてみますと、おつげのとおり体中がだるい。
そこで、ぐぐっとのびをして、
「さて、これでねがいがかなった。ありがたい、ありがたい」
と、立ってみると、なんと、前よりも背(せ)が、かなり低くなっております。
「おや、どうしたことだろう。・・・ああっ! このふとんは!」
いまねていたところをみると、ふとんはふとんでも、ざぶとんの上で、ねていたのでした。
おしまい