ふくむすめ童話集 > 小学生童話 > 4年生むけ > 江戸小話(えどこばなし) > 三人かご
4年生の江戸小話(えどこばなし)
三人かご
いまは、タクシーという、べんりな物がありますが、むかしはそんなものはありません。
まあ、「かご」というものが、いまのタクシーのようなものでしょうか。
そんな、むかしの話でございます。
ある男が急用を思いだして、かごにのりました。
「これ、かごや。急用でいそいでいるんだ。金はたくさん出すから、いそいでくれ」
「へい。では、しっかりつかまっていてくださいよ」
それから、ちょうしよく、
「えいっほうっ、えいっほうっ」
と、いそいでゆきますが、どういうわけか、うしろからきたかごにおいぬかれてしまいました。
客の男は、腹(はら)を立てて、
「いそいでくれというのに、なぜ、いそいでくれない! みてみろ、いま、うしろからきたかごが、先にいったぞ」
と、いうと。
「でもだんな、そいつは、むりですぜ。なにしろ、向こうは三まいですからね」
「三まいとは、なんだ?」
「へい、三人でかつぐことです」
「三人でかつげば、そんなに早いのか」
「へえ、そりゃあもう。まあ、お代金もそれなりですがね」
すると、客の男、
「よし! それならば、かごをとめろ! 金は三人分はらってやるから、おれも出て、三人でかつごう」
おしまい