福娘童話集 小学生童話 6年生
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6年生の江戸小話(えどこばなし)

パッと死ぬ

パッと死ぬ

 若い者(わかいもの)が集まって、たあいもない事を、なんだかんだと話をしていましたが、そのうち、ひとりの男が、
「よく聞け。おれが死ぬときは、男らしく、パッと死んでみせるぞ」
と、いいました。
 ほかのものはわらって、
「バカいえ。そうは、うまくいくもんか」
「いや、何が何でも、おれは、パッと死んでみせる。絶対だ」
と、いってききません。
 ところが、その男。
 二、三日すると、ウマにけられて、本当に、パッと死んでしまいました。
 いっしょに話をしていた連中は、お通夜(つや→死者を葬(ほうむ)る前に家族・縁者(えんじゃ)・知人などが、遺体(いたい)の側で終夜守っていること)の席で、すっかり感心していいました。
「いやあ、まったく、ふしぎ。いや、大したものだ」
「あいつ。本当に、パッと、死んだなあ」
「うん。生きていたら、いまごろは鼻たかだかと、わしらにじまんしておることだろう」
「ああ、そういえば、あいつが死ぬときにいっしょにいた男がいっておったが、あいつの最後の言葉が、『やったぞ!』だったそうだ」

おしまい

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