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6年生の江戸小話(えどこばなし)
つみなひとだま
あるところに、人にお金をかしては、高いりそくをとって、お金をたくわえた男がいました。
人情(にんじょう→人を思いやる気持ち)なんてものは、かけらもありません。
やくそくの日がくれば、病人のふとんまで、はがしてくるという男でした。
ある日の夕ぐれ、この男がかしたお金のとりたてに歩いていると、自分の耳のあなから、ふわーっと、人だまがぬけだして、どこかへ飛んでいってしまいました。
「たっ、たいへんだー!」
人だまがぬけだすと、長くても三年の命と言われています。
もしかすると、今日、死ぬかもしれません。
「こうなれば仕方ない。せったく、たくわえたお金だ。死ぬ前に、ぜんぶ使ってやろう」
男はどんどん、金を使いました。
そして、すべての金を使って、一文無しになったとき、人だまが、ひょっこり戻(もど)ってきていいました。
「すまない、すまない。とびだす日をまちがえてしまった。おれが出て行くのは、あと五十年後だった。これからも、よろしくな」
「ばかやろう! いまごろかえってきても、おそいわ!」
おしまい