ふくむすめ童話集 > 小学生童話 > 5年生向け > 江戸小話(えどこばなし) > ちかづきのしるし
5年生の江戸小話(えどこばなし)
ちかづきのしるし
ある医者が、ひっこしてきました。
ひっこしをしたことはしたのですが、ちかづきのしるしに近所にくばるものが、何もありません。
そこで、商売ものの薬をくばることにしました。
となりの家に持ってゆきますと、となりの主人は、
「ありがとうございます。ですが、わたしどもは、やまいを持っておりませんので、お薬をいただくのは、よしましょう」
と、いいます。
すると医者は、すました顔で、
「どうぞ、ご安心を。わしの薬は、飲むとたちまち、ぐあいが悪くなりますから」
おしまい