福娘童話集 小学生童話 4年生
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4年生の日本民話(にほんみんわ)

宝のどんぶり

(たから)のどんぶり
福井県(ふくいけん)の民話(みんわ)

 むかしむかし、鯖江(さばえ)の城下町(じょうかまち)に、五郎兵衛(ごろべえ)という男が住んでいました。
 五郎兵衛(ごろべえ)はなまけ者で、少しも働(はたら)こうとはせず、家にある品々を売って毎日をくいつないでいました。
 そんなある日、とうとう家の中は、ふとん一枚(いちまい)が残(のこ)るだけになりました。
 さすがの五郎兵衛(ごろべえ)も、ふとんにあおむけになりながら考えこんでしまいました。
「もうこれ以上(いじょう)、売る物がない。どうしようか?」
 その時ふと、天井(てんじょう)からぶらさがっている小箱が、目に止まりました。
「あった! あの箱を売ればいい。・・・いや、まてよ」
 その箱は先祖代々(せんぞだいだい)、貧乏(びんぼう)になって家をなくす時まで開けてはならないと、伝(つた)えられている事を思いだしました。
 しばらくの間、五郎兵衛(ごろべえ)は箱をにらんでいましたが、
「ええい、こんな時だ。ご先祖(せんぞ)さまだって、文句(もんく)はいうまい」
と、さっさと箱を開けてしまいました。
 すると箱の中には、うすよごれたどんぶりが一つ入っているだけです。
「ちぇっ、こんな物、何にもならないや。・・・まてまて、人のいい長者(ちょうじゃ)の源(げん)さんなら『家宝(かほう)だ』といえば、少しぐらいのお金をくれるだろう」
 五郎兵衛(ごろべえ)はさっそく、長者のところへもっていきました。
 長者は家宝(かほう)まで売りにくる五郎兵衛(ごろべえ)をあわれに思い、うすよごれたどんぶりと米五俵(こめ5ひょう)をかえてくれました。
 さて、その年の秋祭りの日に、長者がたくさんのお客を家に呼(よ)びました。
 そしてなにげなく、五郎兵衛(ごろべえ)のどんぶりを、みんなに見せました。
「長者さん、これが家宝(かほう)だって? どんぶりの底(そこ)にコイの染付(そめつけ)があるだけじゃないか。水でも入れたら、何か変(か)わった事でもおきるのですかい? たとえば、染付(そめつけ)のコイが泳ぎだすとか?」
と、じょうだん半分に客にいわれた長者は、
「そうだな。そうかもしれないぞ」
と、どんぶりに水を入れてみました。
 すると不思議(ふしぎ)な事に、コイの染付(そめつけ)がむくむくと動きだして、ピシャンと空中に飛(と)びはねたのです。
「なんと、これは!」
 一同は、ビックリです。
 長者はその不思議(ふしぎ)などんぶりを、五郎兵衛(ごろべえ)に返しました。
 五郎兵衛(ごろべえ)が何度も水を入れてみましたが、ただのどんぶりでした。
 でも長者が水を入れると、コイがちゃんと泳ぎだすのです。
 それをみた五郎兵衛(ごろべえ)は、これはご先祖(せんぞ)さまのいましめにちがいないと思い、それからは、まじめに働(はたら)いたという事です。

おしまい

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