福娘童話集 小学生童話 4年生
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4年生の世界昔話

オオカミ男

オオカミ男
イギリスの昔話 → イギリスのせつめい

 むかしむかし、ある村に、ハンスとクンツという、人のよいお百姓(ひゃくしょう)さんがすんでいました。
 ある日のこと、二人はたきぎをひろいに、森へ出かけていきました。
 道のとちゅうで、二人は一人の男にであいました。
「こんにちは。あなたがたは森へいくのですか? わたしも、おともさせてくださいよ」
 男はたきぎをしばるつなをもっていたので、二人はすっかりしんじて、
「ああ、いいとも。いっしょにいきましょう」
と、いいました。
 男はキバのようなするどい歯をして、こわい目つきをしていたのですが、人のよいハンスとクンツは、男にしんせつにしてあげました。
 そして、楽しく話をしながら、森まで歩いていきました。
 さて、森についた三人は、さっそくたきぎをひろい集めて、たばにしていきました。
「さあさあ、これだけ集めればじゅうぶんだ。そろそろ帰りましょうか」
 三人は重いたきぎをせおい、あせをふきふき歩きました。
 やがて、ひろい野原にさしかかりました。
「ああ、あつい、あつい。あせがびっしょりだ。どうです。たきぎをおろして、このあたりで休みませんか?」
 ハンスがいうと、男も答えました。
「まったく、重たくてかなわん」
 みんなは大きな木の下で、ひと休みすることにしました。
 遠くの方に、五、六頭のウマが、子ウマを連(つ)れて草を食べているのが見えました。
「少し、昼寝(ひるね)でもしませんか?」
「ああ、いいですね」
 ハンスもクンツも、賛成(さんせい)しました。
 ハンスはすぐにねむってしまい、クンツもウトウトしていた、その時です。
 後ろの方で、ガサガサと音がしたのです。
(おや、何の音だろう?)
 クンツは寝返(ねがえ)りをうつと、そっと、うす目で音のする方を見ました。
 ちょうど、男が服を脱(ぬ)いでいるところでした。
 そして、裸(はだか)になった男は、たちまち灰色(はいいろ)の、おそろしいオオカミになったのです。
 オオカミはウマのいる方へものすごい早さでかけていくと、そこにいた子ウマにとびかかって、あっという間に食べてしまったのです。
「うむ、あまりうまくないウマだったな。まあいい、口直しに、後であの2人の人間を食ってやろう」
 オオカミは口の周(まわ)りについた血を、長い舌(した)でペロリとなめ回すと、人間の姿(すがた)になって服を着て、なにくわぬ顔で2人を起こしました。
「そろそろ起きて、出発しようか?」
 ハンスは、すぐに起きあがりました。
 クンツは恐怖(きょうふ)のあまり、ガタガタとふるえていましたが、オオカミにばれないよう、なんとかふるえをがまんして起きあがりました。
 三人はしばらく道を歩いていましたが、オオカミの男が、とつぜんお腹(なか)を押(お)さえて立ち止まりました。
「あいてて! あいてててて!」
 クンツには、その理由がすぐにわかりました。
「やい、オオカミ男め! 子ウマを一頭たいらげれば、誰(だれ)だって腹(はら)が痛(いた)くなるさ。さあハンス。逃(に)げるならいまのうちだ!」
「なんだと、おまえたちも食ってやる!」
 オオカミ男は2人を追いかけましたが、お腹(なか)が痛(いた)くてうまく走れません。
 ハンスとクンツは、なんとかオオカミ男から逃(に)げることが出来ました。

おしまい

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